2015年9月23日(水)
ギリシャ新政権 課題山積
緊縮の影響緩和・急増する難民の対応…
公約違反に不満 国民“消極支持”
【アテネ=島崎桂】20日に投開票されたギリシャ総選挙では、急進左派連合(SYRIZA)が事前予想を覆す大勝を収め、連立を組む「独立ギリシャ人」とともにチプラス政権存続を決めました。ただ、欧州連合(EU)などの圧力により、公約に反する形で受け入れた緊縮政策の実施や、その影響緩和、急増する難民への対応など、新政権の課題は山積みです。
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チプラス氏は先月、EUなどからの最大860億ユーロ(約11兆7000億円)の新たな金融支援の条件として、増税や年金・社会保障の削減を含む厳しい緊縮政策を受け入れました。ギリシャ議会は来月にも、各種緊縮策の法制化を順次開始する予定です。
最大野党・新民主主義党(ND)をはじめ、野党は選挙期間を通じ、「反緊縮」を掲げて誕生したチプラス政権の公約違反を批判。SYRIZAに投票した有権者の間にも、「緊縮策には反対ですが、チプラス氏にもう一度だけチャンスを与えたい」(50代・女性)など、消極的な支持がみられました。
新議会では、議席を持つ8党のうち、ギリシャ共産党と、極右「黄金の夜明け」を除く6党が、新支援とその条件に賛成する立場をとっています。しかし、国民の間で緊縮策への不満は少なくありません。
チプラス氏の方針転換に反発し、SYRIZAを離党した議員らが立ち上げた新党「民衆統一」のコスタス・イシホス前副国防相は、「投票率は約57%にとどまり、1951年以来最低となった上、緊縮策の影響を最も受けた若年層の棄権が際立っている」と指摘。「何よりも今回の選挙結果には、新たな緊縮策の受け入れに『ノー』を突きつけた国民投票(7月5日、反対が約61%を獲得)の民意が反映されていない」と語りました。
同党は今回の選挙で2・9%を得票。議席獲得に必要な得票率3%まで0・1ポイント、約5000票に迫っていました。
こうした批判の中、SYRIZAは緊縮策による国民生活への影響を軽減するための措置を検討しています。
同党のヤニス・ブルヌス政治局員は、脱税・汚職対策の強化やEUの成長・発展向け基金を活用し、「財政的な余裕を確保する」必要性を指摘。「こうした取り組みから、貧困層支援などの社会政策や、雇用創出のための財政支援を強化することが、新政権の最大の仕事になる」と語りました。
欧州で急増する移民・難民への対応も、新政権にとっての大きな課題となります。
SYRIZAは1月の政権樹立以来、ND主導の前政権による抑圧的な難民政策を転換。難民申請の手続きにあたる職員の増員や、海上での救助活動の警備強化、「難民の尊厳を守る対応」(ブルヌス氏)の強化とともに、「欧州各国による責任の共有」を求めています。
ただ、今回の選挙では、「移民受け入れの中止」を訴える「黄金の夜明け」が第3党を維持。NDや全ギリシャ社会主義運動(PASOK)、中道左派政党ポタミも、「これ以上の移民・難民向け支出は受け入れられない」(ポタミのチオドラス報道官)との立場で一致しています。
今後、チプラス政権が移民・難民の支援強化を進めるにあたっては、これら野党の説得と、一部で高まる反移民感情への対応が求められそうです。