2015年9月17日(木)
“投票権法守ろう”
黒人差別の解消訴え
米国 デモ行進 1400キロ踏破し首都へ
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【ワシントン=島田峰隆】米国で選挙での人種差別を禁じた投票権法の擁護や黒人差別の解消を求めて南部アラバマ州を先月出発したデモ行進は15日、最終地点の首都ワシントンに到着しました。リンカーン記念堂前で開かれた集会には、行進参加者や支援者ら約400人が集まり、「投票権法を守ろう」と声を上げました。
デモ行進は「正義を求めるアメリカの旅」と名付けられ、公民権運動団体「全米黒人地位向上協会」(NAACP)が労働組合や人権団体と協力して主催しました。8月1日にアラバマ州セルマを出発し、首都まで約860マイル(約1384キロ)を歩きました。
黄色のTシャツをそろって身に着けた参加者らは、リンカーン記念堂前に着くと「ついに到着だ!」と歓声を上げ、記念館の階段を駆け上がりました。
南部ノースカロライナ州からデモ隊に合流したウイダ・ブラクニーさん(45)は、「太陽の下を毎日7時間程度歩いてへとへとです。でも多くの人が投票権法を守ろうと努力していることが分かり、元気づけられました」と話します。
NAACPのブルックス議長は「黒人の投票権は、人々が犠牲を払った結果得られたものだ。その権利の譲歩や後退は許さないし、われわれは屈しない」と力を込めました。支援団体の代表らも口々に「人種や経済的豊かさにかかわらず、すべての人に投票権が本当に保障されるまで、この旅は終わらない」などと発言しました。
行進参加者は16日には連邦議会を訪れ、投票権法の擁護や拡充を議員に要請します。
成立から今年で50年になる投票権法のもと、黒人の政治参加が大幅に進んできました。しかし一部の州は最近、投票に必要な有権者登録の際の政府発行身分証明書の提示義務付けや投票日前の投票期間短縮など、黒人やヒスパニック(中南米系)に特に不利となる法律を制定。投票権法の骨抜きを図る動きとして批判されています。
投票権法 選挙の有権者登録や投票の際の人種差別を禁じた1965年成立の法律。黒人の参政権は64年の公民権法で認められましたが、南部では同法成立後も、白人側が恣意(しい)的に黒人の有権者登録や投票行為を妨害していました。アラバマ州では65年3月、黒人の有権者登録を保障する法律を求める大規模な行進がセルマから州都モンゴメリーまで行われ、同年8月の投票権法の成立につながりました。