2015年9月11日(金)
欧州委員会 難民受け入れ
12万人 義務化提案
【パリ=島崎桂】欧州に向かう移民・難民が急増している問題で、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は9日、EU各国による計12万人の難民受け入れ義務化や難民支援、不法移民の本国送還を軸とした対策案を発表しました。6月に合意した自主的な取り組み4万人と合わせて、16万人の受け入れを目指します。ただ、ハンガリーやチェコなど中欧諸国は義務化に強く反発。14日に同案を協議するEU内相会議で合意が得られるかは、依然として不透明なままです。
中欧反発 合意形成は不透明
仏東部ストラスブールの欧州議会で演説したユンケル氏は、過去にスペインやチェコ、スロバキアで大量に発生した難民を欧州各国が受け入れた経験を紹介。「第2次大戦後、欧州で6000万人が難民となったことを忘れたのか」「難民の基本的な権利を守る重要性を忘れてはならない」と訴えました。
また、EU内で難民の扱いをめぐる対立が深まっていることを念頭に、「(EU内での)非難の応酬は、難民・移民の助けにはならない」と述べ、協力を呼び掛けました。
ユンケル氏はこのほか、アフリカ諸国での難民増加の抑制と雇用創出に向けた18億ユーロ(約2400億円)の基金設立を表明。併せて、トルコや旧ユーゴ諸国を含む「安全国リスト」を作成し、これら諸国からの難民については本国送還を迅速化する方針を示しました。
欧州委員会は5月にも、EU各国による難民4万人の受け入れと義務化を提案。6月のEU首脳会議では、受け入れ人数で合意したものの、義務化については反対論が相次ぎ、各国の任意の取り組みに委ねました。
しかし、その後も欧州を目指す難民らの死亡事故が相次いだ事から、西欧諸国は積極的な難民受け入れに方針転換。今回新たに受け入れる12万人のうち、既にドイツが3万1000人、フランスが2万4000人、スペインが1万9000人の受け入れを表明、検討しているほか、移民政策での特例を理由に義務を課されない英国も2万人規模の受け入れを表明しています。
一方、チェコのソボトカ首相は9日、「欧州に新たな計画は必要ない」として、各国の任意の取り組みにとどめるよう改めて主張。スロバキアのフィツォ首相も、「義務化は不合理であり、何も解決しない」と語りました。EUは両国に対し、それぞれ約4300人、2300人の難民受け入れを求めています。