2015年9月5日(土)
2015 とくほう・特報
ママたちは政治に働きかける
戦争する国では子を守れない
自民議員に“直談判” 与党揺さぶる
戦争法案に反対する子育て世代の母親の動きが止まりません。「安保関連法案に反対するママの会」などが35都道府県・8地域以上に広がり新しい展開を見せています。特徴は学習会やデモにとどまらず、政治に直接働きかけようと、国会議員や地方議員、首長と懇談・要請したり、請願署名を集めたりしていることです。自民党幹部からは「若い母親の反対の広がりは特に慎重に対応しなければならない」と声があがり、政権与党を揺さぶっています。 (内藤真己子)
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「ママぁ、○○番のお部屋あったよ!」。参院議員会館に子どもたちの元気な声が響き渡りました。同会の「8・27 ママの国会大作戦!」に全国から母親と子どもたち約90人が結集。戦争法案に反対する2万人近いメッセージを参院の主な会派に届けたのです。
「ママのこみ上げる思いがここに詰まっています。ぜひ読んでください」。母親らはグループに分かれて議員控室を訪ねメッセージを届けました。
「あの、いいですか」。4歳の長男を連れて来た美季さん(43)=仮名=は、応対した自民党秘書にせきを切ったように話しました。「国会中継を見ていると政府が質問にまともに答えていないと思う。怒りが募っています。きちんと答えてほしいです」
5歳と3歳の男の子といっしょの櫻井直香さん(32)は、「大きな戦争につながり子どもたちが巻き込まれないか不安です。法案を通さないでください」と頭を下げました。2人とも7月に国会前行動に初めて参加、議員要請は初体験です。
廃案求めて議会に請願
廃案を願う熱い思いが各地でママたちを突き動かしています。
東京キ墨田区の「ママの会@墨田」は2日、区議会に、安保関連法案に反対する意見書を国に提出するよう求める請願を、2500人分の署名を添えて提出しました。同区議会に請願が出されるのは8年ぶり。日本共産党と民主党、無所属議員が紹介議員になりました。先月には区長と会い、要望書を提出しています。
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言いだしっぺの中村華子さん(35)=自営業=は6歳、4歳、1歳の子をもつシングルマザー。「日本が戦争する国になれば、子どもたちを守れない」と7月、子どもを連れ初めて国会前行動に行きました。衆院での強行採決に「もっとやれることがあったはず」と悔やんでいたときママの会を知りました。
「墨田でもやりませんか」。フェイスブックの投稿にママが次々と応じ墨田の会を立ち上げました。お盆明けには5日間連続でママらが子どもと駅頭に立ち署名を訴えました。
1人で200人近い署名を集めたママもいます。放射能から子どもを守る会の活動をしている知人に誘われ、会に加わった3人の子の母親(43)です。携帯電話のアプリ「LINE」で署名のお願いを一斉送信。協力すると言ってくれた人に署名用紙を渡すなどしました。
「署名のため改めて勉強して一番怖いと思ったのは後方支援です。この先アメリカが起こすどんな戦争に巻き込まれるか分からない。日本のために、アメリカから独立していかないとダメです」と熱く語ります。
「強行採決しないで」
北海道の会は、道選出の4人の与党参院議員宛てに約1万5300人の反対署名を集めました。高橋春香さん(41)=学童保育指導員=は勇気を奮って、子どもが通う保育園の約100人の園児全員の保護者に署名用紙を渡しました。半数の保護者から用紙がかえってきました。「『頑張っているね。ありがとう』と声をかけてくれるママもいました。子どもの未来を脅かす戦争法案は許せない、というママやパパの思いは同じです」と話します。同会は新たに衆参両院議長に宛てた反対署名を集めています。
新潟市東区のママたちは「安保法案を勉強し、反対する会」を結成。「子ども連れで普通のデモにはなかなか参加できない。自分たちがやりやすい形で地元から声を上げよう」と区内の大型スーパー前で、毎週木曜の昼下がりにスタンディング宣伝を始めました。
子育てサークルで弁護士を招き「憲法カフェ」を開いたことが始まりでした。安保法案は憲法違反で、核兵器まで運ぶ可能性がある米軍事支援との内容を知り怒ります。
その思いを伝え、意見を聞きたいと地元選出の自民党国会議員と懇談しました。でも「共感できる答えは得られなかった。それなら自分たちで世論を広げる行動をするしかないということになったんです」。こう話すのは4歳の男の子を持つ、同会代表の三谷(みたに)直美さん(44)です。
神奈川県の会も1日、廃案を求める請願署名を横浜市議会に提出。地元の自民党衆院議員ともじかに懇談しました。
石川県の会はネットで募ったメッセージを日本共産党の藤野保史衆院議員をはじめ地元選出の国会議員らに手渡し、反対の思いを伝えています。
兵庫の会は地元選出の鴻池祥肇(よしただ)・参院安保法制特別委員長に「強行採決をしないで」とのメッセージを募り送る取り組みを始めています。