2015年9月1日(火)
タイ新憲法草案
軍幹部らに超越的権限
主要政党・メディアは批判
軍政下のタイで新憲法草案の承認権を持つ国家改革評議会(NRC)は6日、新憲法の最終草案の採決を行います。憲法起草委員会がまとめた最終草案は、軍最高幹部らによる「国家戦略改革和解委員会」が政治危機の際に内閣や国会を超越した権限を行使できる内容。主要政党やメディアは、非民主的だと厳しく非難しています。
昨年5月のクーデターで権力を握った軍政は、それまでの憲法の廃止を宣言し、「政治対立を防止する憲法」を制定するとしてきました。NRCが最終草案を承認すれば、来年初めの国民投票にかけられます。
新憲法草案で新設されるのが陸軍司令官ら最大23人で構成する「国家戦略改革和解委員会」。憲法制定から5年以内と期限を切っていますが、政治危機が発生した際に立法権と行政権を行使するとしています。
クーデターで倒されたタクシン派政党・タイ貢献党のインラック元首相は、「国民の政治的意思と願望を反映しないもので受け入れ難い」と批判。貢献党と激しく対立してきた民主党のアピシット元首相も、「NRCが最終草案を承認すれば、政治対立と暴力が再燃する」と指摘し、最終草案を否決するよう呼び掛けました。
憲法起草委員会のボウォンサック委員長は「いま完全な民主主義を望めば、また政治紛争を招く」と最終草案を擁護。軍政トップのプラユット暫定首相(前陸軍司令官)も「政治家に憲法最終草案に口出しする権限はない」と述べ、政党政治を敵視する姿勢を隠しません。
英字紙バンコク・ポストは社説で、「(プラユット)首相は国家戦略改革和解委員会が将来の政治騒乱を防ぐというが、全権を持つ委員会の創設自体が対立を引き起こす」と指摘。「将来のクーデターに正当性を与え、合法化するための政治的道具になる」と批判しています。(面川誠)