2015年7月29日(水)
トルコ シリアのクルド人拠点も攻撃
武力行使拡大に反対の声
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【カイロ=松本眞志】トルコ政府は、隣国シリアにある過激組織ISの拠点への攻撃に続き、26日にイラク北部の武装組織クルド労働者党(PKK)の拠点を攻撃し、さらに27日、シリアのクルド人民防衛部隊(YPG)の拠点も攻撃しました。トルコ国内では武力行使拡大に反対の声が上がっています。
YPGへの攻撃についてトルコ政府は、「YPGは攻撃の対象外であり、事実関係を調査中」だとしていますが、YPGとPKKは互いに協力関係にあります。
トルコのクルド系野党・国民民主主義党(HDP)のデミルタシュ党首は27日、地元紙ヒュリエトで、エルドアン政権がシリアやイラクでの空爆に踏み込んだことについて、「この国を一歩一歩(シリアの)“内戦”そして地域戦争に引きずり込むものだ」と批判しました。
さらに、攻撃対象がクルド人武装組織にまで及んだことについて、与党・公正発展党(AKP)政権による単独支配復活のもくろみと結びついたものだと主張しました。
AKPは今年6月の総選挙で大幅に議席を減らし、2002年の政権樹立以来、初めて過半数を割りました。エルドアン大統領の権限強化をねらった大統領制導入を国民が拒否したことが主な理由です。同時に、支持者の一部が同党の対クルド人融和策に反発、右派の民族主義者行動党(MHP)に流れたことも大きいとされています。
現在、エルドアン政権は組閣の作業に入っていますが、連立工作が失敗した場合には再選挙の可能性もあります。今回の武力行使も、選挙が行われた場合に離反した支持層を取り戻すねらいがあるとされています。
国内では、首都アンカラや最大都市イスタンブールで、政府の武力行使拡大に反対する集会が開かれています。参加者は、ISなどのテロが増大したのは、エルドアン政権がシリアのアサド大統領を倒すため無差別に同国内の反政府勢力を「支援」してきた結果だと非難しています。