2015年7月26日(日)
元軍人7人の審理開始へ
チリ 軍政下の火あぶり事件
【グアテマラ市=菅原啓】南米チリのピノチェト軍政下で民主化を求める青年が弾圧で火をつけられ死傷した通称「火あぶり事件」を調査していた首都サンティアゴの控訴裁は24日、7人の元軍人を殺人容疑などで裁く審理の開始を決定しました。
チリからの報道によると、事件の被害者はロドリゴ・ロハスさん=当時(19)=と女子学生のカルメン・キンタナさん=同(18)=。2人は1986年7月、独裁政権への抗議行動に参加して拘束され、サンティアゴ近郊で重度のやけどを負った状態で発見されました。ロハスさんは数日後に死亡、キンタナさんは一命をとりとめたものの、長期の療養を余儀なくされました。
決定を発表したカロッサ判事は、複数の軍幹部を尋問した結果、当時、青年を拘束した6人の元軍人について殺人罪および殺人未遂罪、輸送する車両を運転した別の元軍人については殺人ほう助の罪が適用できる、その「データがある」と述べています。
裁判開始を決定づけたのは、巡回活動に参加していた元志願兵フェルナンド・グスマン氏の証言でした。同氏は、元軍人たちが2人を拘束し、その後ガソリンをかけ、火を放ち、最後には道路脇の溝に投げ捨てたと証言。これは、以前の証言を翻すものでした。
ロハスさんの母ベロニカ・デネグリさんは、「私はいつの日かちゃんとした判事が現れるという信念を失うことはなかった」と喜びを語りました。
元軍人らはこれまで過去の人権侵害について互いに沈黙を守り、追及を逃れようとしてきました。今回のように元軍人自身が事件関与を証言するのはきわめて異例です。