2015年7月14日(火)
新憲法草案に各紙反発
ネパール 報道規制強化の恐れ
【ニューデリー=安川崇】ネパール制憲議会では、急ピッチで新憲法制定作業が進んでいますが、新憲法草案にメディア規制強化を可能にする条項が含まれている点に、新聞各紙から反発が出ています。
2008年に同国で始まった憲法制定プロセスは、各党間の食い違いから大幅に遅れてきましたが、6月初めに主要4党派が州の数などの懸案事項について大筋合意。これを受けて同30日に起草委員会が草案を制憲議会に提出し、7月7日に承認されました。政府は月内にも草案に対する国民の意見聴取を実施する構えです。
新聞が反発したのはこの中の、報道の自由に関する部分。報道によると、現行の暫定憲法が「全面的な報道の自由」を定めているのに対し、草案では単に「報道の自由」という表現に後退しました。
また草案は、「あらゆるメディアは報道の内容によって閉鎖されたり登録を取り消されたりすることはない」と定めた部分に続いて「この条項の規定は、政府がメディアを規制するあらゆる立法を行うことを妨げない」としています。
英字紙カトマンズ・ポストは5日の社説で「疑念を抱かせる条項だ。政府が適切だと判断すれば、メディアを閉鎖させることができることを意味する」と指摘しました。
リパブリカ紙は6日の社説でより直接に、「憲法の起草者たちが、既得権益層の利益に奉仕する上で、自由で独立したメディアが障害になることを恐れていることは明白だ」と批判しています。
この点に加えて、実際の州の境界線や政教分離の在り方などについて各党間に合意ができていません。憲法制定にはなお曲折が予想されています。