2015年7月6日(月)
タイ軍政の学生14人逮捕 抗議行動広がる
メディア介入を大手紙が批判
タイで軍政退陣を求める街頭活動に参加した14人の学生が6月26日に逮捕されたことに対する抗議が広がっています。バンコクの大学構内で始まった抗議行動は、学生が拘束されている刑務所前や駅前での集会に拡大。軍政に批判的な論調を抑え込もうとするメディア締め付け強化に対しても、大手紙が批判の社説や論説を掲げました。(面川誠)
学生たちは、タマサート大学構内に“模擬監獄”を設置し、交代で抗議の座り込みを続けています。学生の一人は現地メディアに、「全員が条件なしで釈放されるまで座り込みを続ける」と語りました。
刑務所前で抗議
学生が拘束されている刑務所前には1日夜、約100人の支援者が集結。ろうそくを手にした参加者は、釈放を求めるプラカードを掲げて、2日未明まで抗議の声を上げ続けました。
バンコク中心部の高架鉄道駅前では3日、「ポスト・フリーダム」と名付けた行動に約1000人の学生や市民が参加しました。大型の付箋に「14人を釈放せよ」「民主主義の回復を」などさまざまなメッセージを書き、駅構内の壁に貼り付ける行動です。この壁は「民主主義の壁」と呼ばれています。
大学教員も学生支援に乗り出しました。タマサート大学の教員10人が「学生拘束を懸念する大学教員ネットワーク」を結成。学生の無条件釈放を求める声明を発表したところ、これまでに280人の大学教員が賛同署名したといいます。
国際的な批判も
国際的な批判も高まっています。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)東南アジア地域事務所と欧州連合(EU)はそれぞれ6月30日、学生の釈放を求める声明を発表しました。
こうした抗議と批判の高まりにも、軍政当局は「5人以上の政治集会禁止という軍政令に違反した以上、軍事法廷で裁く」との立場を変えていません。昨年5月のクーデターの首謀者であるプラユット暫定首相は「法は法だ」として釈放を拒否。さらに「学生の背後に政治勢力がいる」と述べ、弾圧を拡大する姿勢すら見せています。
軍政当局はメディアへの締め付けも強めています。国内メディアだけでなく外国特派員も含め約200人を集めて、「事実をゆがめない報道」のための指針を伝える会合を近く開催するといいます。
軍政のメディア監視機関は、公共テレビ局のタイPBSが先月25日の番組で、14人の学生が所属していた学生団体を肯定的に評価する大学教員のインタビューを放映したことを問題視。「報道規則違反」を理由に罰金を科す方針です。
バンコク・ポスト紙は4日付の社説で、「軍政当局の行動は、学生14人が逮捕された後の状況下で報道を威圧しようとする試みと解釈できる」と批判。ネーション紙6月29日付の論説は、「プラユット首相はメディアへの干渉を中断すべきだ。彼は自分の業績と今後の計画でメディアを感心させようと懸命だが、まともに取り合う記者はほとんどいない」と痛烈に皮肉りました。