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2015年6月30日(火)

アジア投資銀 設立署名

中国が“拒否権” 年内始動へ

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 【北京=小林拓也】中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立協定署名式が29日、創設メンバー57カ国の代表が出席して北京の人民大会堂で開かれました。各国での批准を経て、AIIBは年内に始動することになります。

 中国財政省が公表した協定などによると、AIIBの資本金は1000億ドル(約12兆3000億円)。中国が約297・8億ドルを引き受け、最大出資国となります。次いで、インドが83・7億ドルを出資。ロシアの65・4億ドル、ドイツの44・8億ドル、韓国の37・8億ドルと続きます。

 中国の議決権は26・06%。増資など重要事項の決定には75%以上の賛成が必要なため、中国が事実上の拒否権を握ることになります。ただ、参加国が増えるにつれ、中国の議決権は次第に減っていくといいます。

 AIIBは、総務会、理事会、事務当局で構成。理事会は12人から成り、アジア域内から9人、域外から3人の理事が選ばれます。

 本部は北京に置かれます。総裁の任期は5年で2期まで。初代総裁には、中国財政次官やアジア開発銀行(ADB)副総裁を歴任した金立群AIIB設立準備事務局長が最有力視されています。

 署名式であいさつした中国の楼継偉財政相は、AIIBの設立について「中国がアジアと世界の経済発展にさらに多くの国際的責任を担うもので、相互利益と共同発展の実現を促進させる重要な措置だ」と述べました。

 AIIBは、アジア地域に不足しているインフラ整備のための資金を投資する機関として、習近平国家主席が2013年10月に提唱。アジア諸国以外にも、英国、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州諸国が相次いで創設メンバーとして参加を決めました。日本と米国は参加を見送ったままです。


解説

新しい経済秩序求める動き

公正運営へ 中国に注目

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)はアジアの膨大な資金需要にこたえるため、新興国・途上国が主導して設立する国際金融機関です。大国中心ではない、新しい国際経済秩序を求める動きといえます。

 これまで世界の国際金融システムを支配してきたのは、米国が決定的な力を握る国際通貨基金(IMF)と世界銀行です。新興国が経済力を増す中で、IMFにおける大国優位を見直すことが2010年に決まりましたが、米国は事実上、単独で重要事項の決定を拒否できる特権を手放しません。

 戦後、アジアで発展途上国のインフラ整備に資金を融資してきたのは世界銀行とアジア開発銀行(ADB)でした。ADBも日本と米国が圧倒的な力を持つ機関です。しかし、大国主導の開発金融は限界にきています。東アジア・太平洋地域で2010〜20年にかけて電力、道路、水道などの整備に必要な資金は8兆ドル(約980兆円)。ADBの融資額は1年間に百数十億ドルと、まったく追いつきません。

 新興国・途上国がAIIB設立に踏み切った背景には国際金融機関の改革の遅れに対する批判と、インフラ資金に対する切実な要求があります。

 AIIBの議決権は出資金に応じて各国に配分され、出資金額は各国の国内総生産(GDP)に応じて決まります。最大の出資国である中国が事実上の拒否権を持ち、本部も北京に置かれるなど、中国が大きな権限を手にします。今後、公正な運営を保証する上で中国の役割が一段と注目されます。

 署名式では創設メンバー国のうち7カ国が署名を見送りました。このうちフィリピンは、南シナ海の領有権問題をめぐって中国と対立を深めています。フィリピン政府はAIIBの運営についても検討することを表明していると伝えられます。

(山田俊英)
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