2015年6月28日(日)
主張
2015「骨太」素案
安倍経済政策の行き詰まりだ
安倍晋三政権が毎年この時期に発表している「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)2015年版と「日本再興戦略」改訂版の素案が明らかになり、政府は週明けにも正式決定しようとしています。安倍政権になって3回目の「骨太の方針」は相変わらず「経済再生」や「財政健全化」を目標に掲げていますが、同じ目標を掲げ続けること自体、安倍政権が発足以来取り組んできた「アベノミクス」(安倍首相の経済政策)でも経済は再生せず、財政はますます悪化していることを示しています。破綻が明らかな「アベノミクス」の中止こそ必要です。
経済再生優先いいながら
「安倍政権は、政策の1丁目1番地を経済の再生と位置づけている」「強い経済の再生なくして財政再建も日本の将来もない」―。約2年半前、民主党政権に代わって政権に復帰した安倍首相が第2次政権発足直後、経済財政諮問会議や産業競争力会議を立ち上げ、最初の経済対策を打ち出した際の記者会見(13年1月11日)での発言です。
安倍政権は大胆な金融緩和と機動的な財政政策、規制緩和など「成長戦略」を「アベノミクス」の3本柱として打ち出してきました。日銀総裁の首をすげかえ、2%の物価上昇を目標にした異常な金融緩和、財政赤字を続けながらの軍事費や大型開発予算の拡大、安倍首相が「岩盤規制」と非難する農業や雇用、社会保障などの規制緩和です。なかでも消費税率の5%から8%への引き上げを昨年4月から強行し、一方、大企業を優遇する法人税の減税を昨年、今年と続けてきました。
2年半の「アベノミクス」がなにをもたらしたか、今回の「骨太の方針」素案は、「デフレ脱却・経済再生」も「財政健全化」も、「大きく前進してきた」と主張します。しかしその内実は、昨年4月からの消費税増税で消費が大きく落ち込み、実質経済成長率は昨年度1年間でマイナス0・9%の後退というありさまです。素案でも経済に弱さが残るなか消費税増税で実質総雇用者所得が落ち込んだことなどが経済に下押し圧力をもたらしたと認め、今年10月に予定していた消費税の再増税を延期したと弁解しています。「アベノミクス」が株高や大企業の利益拡大をもたらしただけで暮らしや地方に波及していないと批判されることについても、「地方への好循環拡大」の必要性にふれざるをえません。
なかでも深刻なのは財政再建の立ち遅れです。安倍政権になってから財政赤字は増え続けています。素案も、経済と財政双方の一体的再生を目指す「経済・財政再生計画」の策定を打ち出しました。しかし、金融緩和のため日銀が国債を買い上げ、歳出の膨張や大企業減税が財政をいよいよ破綻させているのに、「アベノミクス」をそのままにして再建は不可能です。
企業の「稼ぐ力」偏重
安倍政権が「骨太の方針」で持ち出そうとしている政策は、企業の「稼ぐ力」に偏った「経済再生」策や社会保障を中心とした歳出の「改革」など、結局は破綻した「アベノミクス」を続けるものでしかありません。
一握りの大企業のもうけを増やすのではなく、国民の暮らしを豊かにし経済も財政も立て直す政策への根本的転換が不可欠です。