2015年6月22日(月)
南シナ海 対中対立
「軍事偏重」比政府に批判
上院議員が米との協定「議会批准必要」
南シナ海の領有権問題で中国との対立が続くフィリピンで、アキノ政権が軍事的な対応に傾きすぎているとの批判が広がっています。上院では過半数の議員が、昨年締結された米軍増強を目的とする米比軍事協定について、議会批准がなければ無効だとする決議案に署名。日本の自衛隊の海外派兵拡大の可能性に対しても懸念が出ています。(面川誠)
自衛隊基地利用に懸念
フィリピンは昨年4月、米軍のフィリピン軍基地への「巡回配備」を大幅に増強するほか、基地内で米軍が臨時施設を建造することも認める新協定に調印しました。
今年の米比合同軍事演習は昨年の倍の規模となる約1万1000人で実施し、南シナ海での強襲揚陸訓練も行いました。さらに、21日からフィリピン海軍と日本の海上自衛隊が南沙(英語名スプラトリー)諸島の東の公海上で共同演習を行っています。
上院(定数24)では先週、13人の議員が、米比新軍事協定が発効するためには上院の批准が必要だとする決議案に署名しました。
フィリピン政府の立場は、新軍事協定は既存の訪問米軍地位協定の付属文書だから上院の批准は不要だというもの。これに対して、決議案に署名したサンティアゴ上院外交委員長は声明を発表し、「これまで上院が異議を唱えなかったことは明らかに過ちだった」と指摘。「外国軍の基地、部隊、施設を容認するいかなる条約も上院の承認を必要とする」と強調しました。
新軍事協定については、戦争放棄を定めた憲法に違反するとの提訴があり、最高裁で審理中。上院の決議が採択されれば最高裁に送付される予定で、違憲審理に影響を与えるとみられています。
サンティアゴ委員長は現地記者団に対して、大統領が最近の訪日で「自衛隊がフィリピン軍基地を利用できるようにする協定についても協議の用意がある」と述べたことが、「決議案の作成を急がせた」と言明しています。
現地紙テンポ(電子版)は20日、ティニオ氏ら3人の下院議員が最近、「南シナ海問題で米国に頼りすぎるな」と呼び掛けたと報じました。ティニオ議員は「米国はフィリピンに再び米軍基地をつくろうとしている」と警告したといいます。
アティエンサ下院議員は20日、現地ラジオのインタビューで、日米との軍事演習について「中国との紛争を悪化させている」と指摘。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所への提訴を含め、すでにフィリピン政府が取っている外交活動を強化すべきだと語り、軍事対応が外交活動の効果を弱めていると批判しました。