2015年6月13日(土)
中国 周永康被告 無期懲役判決
裁判は非公開、秘密裏
【北京=小林拓也】収賄などの罪で起訴されていた中国の前最高指導部メンバーの周永康・前中国共産党政治局常務委員(72)に対し、天津市人民法院は11日に無期懲役の判決を言い渡しましたが、非公開、秘密裏の裁判には驚きも出ています。
1949年の中華人民共和国成立後、党政治局常務委員経験者が汚職容疑で起訴され、裁判の判決を受けたのは初めてです。習近平国家主席は、2012年11月の党大会以降、反腐敗闘争を大規模に推し進め、「虎もハエも一網打尽にせよ」とことあるごとに指示。周永康氏は「大虎」と位置付けられており、今回の判決は習近平指導部の反腐敗闘争に対する強い決意を示しました。
12日付の党機関紙・人民日報は、「どのような人物も憲法と法律を超越した特権を持つことはない」と題する論評を掲載。「この案件の処理は、法に基づく腐敗の処罰に対する党の鮮明な態度と断固たる決心を明らかにした」と強調しました。また「清潔な党風建設と反腐敗闘争は永遠に途上だ」と、今後も反腐敗闘争を続ける決意を表明しました。
審理は5月22日に非公開で行われ、11日夕に判決内容が突如公表されました。中国の法律関係の新聞で働く記者は「裁判が行われたことも知らなかった」と驚きます。
悪影響を懸念
2013年8月に行われた薄熙来・元党政治局員の裁判は、中国版ツイッター「微博」で中継されるなど公開措置が取られました。一方、周氏の裁判は非公開で秘密裏に実施されました。中国政治に詳しい北京大学准教授は「公開した場合、元最高指導部の腐敗が明らかになり、社会に対しマイナスの影響が出ると懸念したのだろう」と推測します。また、習近平指導部が「法に基づく統治」を強調しながら、裁判を非公開にしたことに関し、「法治国家建設はまだまだ道半ばということだ」と述べました。
裁判で周氏は、収賄、職権乱用、国家機密漏えいの三つの罪に問われ、無期懲役に加え、政治的権利の終身剥奪、個人財産没収の判決が下されました。中国国営メディアが公表した周氏の収賄額は約1億2977万元(約25億9000万円)。職権乱用で家族らに21億3600万元(約425億円)の利益をもたらし、14億8600万元(約296億円)に上る経済的損失を国家に与えたとしました。また、5件の極秘級の文書と、1件の機密級の文書を提供したとされます。
周氏擁護に配慮
巨額の収賄額を踏まえ、周氏に対する判決は「執行猶予付き死刑」になるのではとも予想されていました。前出の准教授も「予想よりも軽いという印象だ」と語ります。その上で、「元指導部らには周氏を擁護する声もあり、それらに配慮した政治的な決定だろう」と解説しました。