2015年6月9日(火)
トルコ 与党が過半数割れ
総選挙 強権政治に厳しい審判
クルド系が躍進
【カイロ=松本眞志】トルコの第25回総選挙(一院制、定数550)は7日投開票され、与党・公正発展党(AKP)は258議席となり、2002年の政権獲得後初めての過半数割れとなりました。同党が目指す大統領制導入へ向けた憲法改正に必要な6割の議席(330議席)獲得に遠く及びませんでした。AKPの実権を事実上握っているエルドアン大統領の強権的政治姿勢に対し、国民が厳しい判断を下した形です。投票率は86・6%でした。
クルド系の国民民主主義党(HDP)は、選挙前の29議席から79議席に大躍進。得票率も13・1%と大きく伸ばしました。デミルタシュ共同党首は、「HDPは真のトルコの政党になった」と結果を歓迎しました。
第2党の共和人民党(CHP)は選挙前の125議席から132議席への微増。極右政党・民族主義者行動党(MHP)も81議席と大幅議席増となる見込み。
エルドアン大統領は、現在の議院内閣制から大統領制に移行することを目指しており、今回の選挙でAKP単独で憲法改正ができる3分の2の議席獲得を目指しました。
軍の政治介入に抗し、イスラムの伝統を尊重した民主主義を目指して政権に就いたAKPでしたが、近年は強権的な政治運営を強化。特に有権者の中で大きな割合を占める若年層は、これに強く反発しました。
前回の選挙で半数がAKPに投票したとされるクルド人(有権者の2割)も、今回はHDPなどに流れ、同党の過半数割れに貢献しました。背景には、シリアで過激組織ISがクルド人地域に侵攻した際に、政府が必要な手を打たなかったとして国内のクルド人社会でAKP政権への不満が高まっていたことがあります。
今回の選挙結果について、共和人民党のクルチダルオール党首は、「民主的手法によって(強圧政治の)時代が終わった。民主主義が勝利した」と強調しました。
AKPのダウトオール首相は7日深夜、「AKPが選挙の勝者だ」と宣言しましたが、過半数割れしたもとで組閣するには、他党との連立交渉に入らざるを得ない状況です。それが不調に終わった場合には、早期に解散・総選挙となる可能性も否定できません。