2015年6月8日(月)
南シナ海安定化へ協議続く
行動規範の早期策定を再確認
中国とASEAN 埋め立て依然対立
東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が3、4の両日、北京で高官協議を開き、南シナ海行動規範(COC)を早期に策定すると改めて確認しました。南シナ海での岩礁埋め立てをめぐる対立が激しさを増し、依然として緊張が緩和しない一方、安定化を目指す地道な協議が続いています。(面川誠)
共同議長を務めた中国の劉振民外務次官とタイのノパドン外務次官補は4日の共同会見で、南シナ海行動宣言(DOC)を全面的、実効的に履行すべきだとそれぞれ強調。劉氏は、海洋協力のための海上捜索救助ホットラインや、偶発的な軍事衝突の回避を目的とする各国外務高官間のホットラインを早期に設置することで合意したと述べました。
ノパドン氏は「COC策定は各国間の相互信頼を強化し、偶発的な事件を回避することが目的で、2国間の紛争を解決するものではない」と指摘。COCを締結すれば、領有権争いが未解決のままでも、南シナ海の平和と安定は図れるとの展望を強調しました。
劉氏も「ASEANが提示した『2本立ての考え方』に賛成する」と述べ、ノパドン氏と同様の考えを表明しました。「2本立ての考え方」とは、領有権紛争は直接の当事国の話し合いによって解決し、南シナ海の平和と安定についてはASEAN10カ国と中国が共同で責任を持つというものです。
ただ劉氏は、中国が加速化させている岩礁の埋め立てや人工島造成は“正当だ”との立場に固執。「事態を悪化させる行為の自制」を明記したDOCの履行やCOCの締結に向けた道のりの困難なことを浮き彫りにしました。
中国の埋め立て加速に対抗するかのように、ベトナムは5日までに南沙(英語名スプラトリー)諸島を巡るツアーを試験的に行うと決定。フィリピンのアキノ大統領は4日、米軍のフィリピン軍基地へのローテーション展開増強に加えて、日本の自衛隊による基地使用についても、「協議を開始する用意がある」と言明しました。
中国への批判を強めている米国のラッセル国務次官補(アジア太平洋担当)は3日、ワシントンで講演し、韓国に対しても「南シナ海問題について声を強めるべきだ」と求めました。韓国はこれまで中国批判を控えています。
中国の崔天凱駐米大使は4日、CNNのインタビューで、「米国が中国を威嚇するような発言や脅迫する行動をやめるよう望む」と強調。南シナ海問題をめぐる対立は、直接の当事者だけでなく、周辺諸国を巻き込む形で激しさを増しています。
南シナ海行動宣言(DOC)・行動規範(COC) 中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の4カ国(ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ)は、南シナ海の全域または一部の島しょの領有権を主張。中国とASEANが2002年に合意した「南シナ海行動宣言(DOC)」は、領有権紛争の平和的解決、事態を悪化させる行為の自制、協力事業の推進などを明記。「南シナ海行動規範(COC)」は、DOCを発展させて法的拘束力を持たせる文書で、13年9月に公式協議入りしました。