2015年6月7日(日)
トルコ総選挙きょう投票
与党“6割議席”に関心
権限集中の改憲狙う
クルド系政党に勢い
【カイロ=松本眞志】トルコで7日、総選挙(定数550)の投票が実施されます。選挙では、イスラム主義与党・公正発展党(AKP・311議席)が大統領に権限を集中させる憲法改正に必要な6割の議席(330)を獲得できるかどうかに関心が集まっています。
政権を担うエルドアン大統領は現在、中立的立場を示すため、AKPを離党しています。しかし、全国各地でAKPへの支持とともに憲法改定の必要性を訴えてきました。同氏とAKP政権は、過去に繰り返された軍のクーデターと不安定な政治状況を克服し、トルコ独自の文民政治を定着させてきました。トルコ紙トゥデーズ・ザマンは、各分野で前進を遂げたと評価しています。
一方、エルドアン氏の政治運営は、首相在任後期から反政府デモへの弾圧、批判的ジャーナリストに対する規制など強権的手法が目立つようになったといわれます。同紙によると政権を批判する人々は、「エルドアン氏の民主主義に関する理解は、選挙を意識したもので、言論の自由に関心を払っていない」と非難しています。
最近の世論調査でもAKPの支持率は41〜43%。前回総選挙(2011年)の50%を大きく下回っています。米紙クリスチャン・サイエンス・モニターは、「若い有権者は、エルドアン政権下でのトルコの繁栄には権威主義的支配の影が映っているとみている」と報じました。
エルドアン氏は、昨年8月の大統領就任以降、「汗をかき、走り回り、体を酷使する」といって自ら閣僚会議を指揮。経済政策では中央銀行を叱咤(しった)し、クルド人との和平プロセスでは内閣と衝突するなど「儀礼的」な現在の大統領職の枠を超えた活動を精力的に展開しました。
今回の選挙では、クルド系の国民民主主義党(HDP・29議席)が勢いを見せており、議席を伸ばしてAKPを初の過半数割れに追い込むともいわれています。これに対しAKP支持者は、連立政権が誕生した場合、政権が不安定になると主張します。
トルコで老舗の党、共和人民党(CHP・125議席)は、従来の「世俗主義かイスラム主義か」とのスローガンを取り下げ、より現実的な経済問題やシリア難民問題を含む外交問題など政策面での政府批判にシフトして選挙戦をたたかいました。