2015年5月29日(金)
戦争法案 新たなごまかし
「戦闘行為がないと見込まれる場所」
法的根拠も検証もなし
戦争法案で戦地派兵される自衛隊員が「殺し、殺される」危険に国民の不安と批判が強まる中、安倍政権は新たなごまかしを持ち出しています。安倍晋三首相と中谷元・防衛相が26日の衆院本会議で、派兵される自衛隊の活動場所として言及した「自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所」という概念がそれです。27日からの衆院安保法制特別委員会での総括質疑でも繰り返されています。
この問題は日本共産党の志位和夫委員長が27日の衆院安保法制特別委で「そもそも法案にはそんなことは書いていない」と批判したように、法案のどこにも「戦闘行為がないと見込まれる場所」という言葉は存在しません。法案取りまとめの自民・公明の与党協議でも一度も論議されていません。法的根拠もまともな検証もないものです。
国際平和支援法案7条3項で、防衛相が「円滑かつ安全に実施することができるように」自衛隊の活動を実施する区域を指定するとしており、その運用として「戦闘行為がないと見込まれる場所」と言いだしたのです。
中谷防衛相は28日の特別委の審議で、「従来の非戦闘地域も、新たな仕組みも、現実に自衛隊が活動する期間は、戦闘が発生すると見込まれない場所であり、安全性においての相違はない」などと発言。「武力行使の一体化」の基準は変わったが、安全性は変わらないというのです。
しかし、「非戦闘地域」という地域制限を撤廃し、「戦闘現場」の近くまで行って活動する枠組みに変わりはありません。
その一方で、活動地域の変化で隊員の危険が高まることを、安倍首相をはじめ政府は頑強に認めません。中谷防衛相の答弁は、「戦闘地域、戦闘現場の近くにも安全な場所はある」「安全な場所を選んで活動するから大丈夫だ」と、無責任に言っているだけです。「戦闘地域の中にも『非戦闘地域』がある」というおかしな話です。
一方、中谷防衛相は「非戦闘地域は、長期間を想定し固定的に区域が設定されていた」「非戦闘地域を設定すると(状況の変化に対応して)柔軟な活動ができない」として、「非戦闘地域」のデメリットを強調。新しい仕組みで「常に情勢を踏まえた判断が行われ、安全確保とともに柔軟な活動が可能になる」と述べています(27日)。
「非戦闘地域」の制限を取り払い、前線で戦闘中の米軍との連携の中、戦況の変化に応じ「見込み」が外れることも織り込んで「柔軟」に活動できることにメリットがあるということです。安倍首相も「(戦闘がないと)十分見込んでいてもそうでなくなる可能性はある」と述べています。
安全は二の次で軍事の論理を優先するのが本当の狙いです。