2015年5月27日(水)
ネパール大地震
教育再開 めど立たず
8600人以上の犠牲者を出したネパールの大震災が発生して1カ月が過ぎても、学校再開のめどが立っていません。同国政府は6月初頭にも再開する意向ですが、学校の多くは、がれきの撤去すら終わっていません。 (チャウタラ〈ネパール中部シンドゥパルチョク郡〉=安川崇 写真も)
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最大規模の被害があったシンドゥパルチョク郡の中心都市チャウタラ。幼稚園から高校3年に相当する1300人が学んでいた郡内最大の公立学校では、3階建てのコンクリートの校舎が波打つように崩れました。
机や棚などの回収作業を見守っていた職員のクリシュナ・ゴパル・シュレシュタさん(35)は「校舎に子どもを呼べる状態ではない。テントで再開するしかないが、スムーズに授業が行えるのに1カ月はかかるだろう」と話します。
「最低5〜6年」
政府から当座の資金として30万ルピー(約57万円)が支給されるといいます。しかしコンピューター教室では端末35台ががれきの下に。これだけで数百万ルピーの被害です。「本当の再建には最低5〜6年が必要だ」
様子を見に来た6年生のロハン・シュレシュタ君(12)は「地震以来、友だちに会っていない。早く元の学校に戻ってほしい」と伏し目がちに話します。
約4キロ離れた別の公立中学校では、5棟の校舎が1棟を残し倒壊。鉄骨の屋根だけは残るものの壁はほぼ崩れ落ちました。がれきの間に教科書や地図が埋まっているのが見えます。
社会科を教えるピタム・クンワルさん(48)は「自宅が壊れた子どもたちは衝撃を受けている。この学校の姿を見れば、さらにショックを受けるだろう」と語ります。校庭で授業を再開するためのテントはまだ届きません。
4月25日の地震と5月12日の大規模な余震で、全国で少なくとも6000校が倒壊したとみられています。
国連児童基金(ユニセフ)ネパール代表は今月初めの声明で、「ほぼ100万人の児童・生徒が校舎を失った。教育の中断が長引くと、子どもたちの発達と将来の展望が奪われかねない」と警告しました。
就学率の低下も
一方専門家は、子どもの精神面のケアのためにも何らかの形での学校再開が重要だと指摘します。
「この1カ月、子どもたちは災害に直面し続けてきた。そこからいったん離れて友人と会い、体験を共有し、課題に取り組む空間があることが、癒やしのプロセスにつながる」
児童支援NGOで早期教育事業を担当するミナクシ・ダハルさん(43)は語ります。避難所や村などにテントなどによる「臨時学習センター」の開設事業を進めています。
ネパールでは政府や国際社会による教育普及活動で、1990年に64%だった就学率が今年は95%を超えました(国連調べ)。しかし貧困などから働き始めて登校をやめる「ドロップアウト」が長年の課題です。今回の地震で、就学率とドロップアウトがともに悪化する懸念も指摘されています。