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2015年5月26日(火)

先物取引規制緩和 安倍政権業界いいなり推進

消費者被害の拡大必至

日弁連・主婦連などいっせい抗議

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 訪問や電話による不意打ち的な販売行為(不招請勧誘)を禁止する法規制が消費者団体などの運動によって実現したことで沈静化しつつあった商品先物取引による消費者被害が、再び拡大しかねない事態となっています。


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 商品先物取引による消費者被害は市場の拡大にともなって広がりました。国内商品取引所の取引金額が130兆円にのぼった2000年以降、消費生活相談センターへの相談・苦情の件数は06年まで毎年4000件を超えました。

 とりわけ被害が深刻なのは、証拠金の10倍程度の額の商品を取引できることから損失の額も跳ね上がることです。数百万円から数千万円もの損をして、人間不信から病気や家庭崩壊、自殺にまで追い込まれる悲惨な事例も少なくありません。

被害の最大の原因

 もともと商品先物取引に関心も知識もない消費者を巻き込んでいく不招請勧誘が、被害の最大の原因になっていました。

 こうした状況をふまえて、09年7月の商品先物取引法改正で、一般の個人にたいする不招請勧誘の禁止を導入。11年1月に完全施行されて以降、消費生活相談センターへの相談・苦情は確実に減少(グラフ参照)しています。

 ところが商品先物取引業者からは、不招請勧誘禁止撤廃を求めるまきかえしが起こります。業界団体の日本商品先物振興協会は13年5月、内閣府規制改革推進室に「個人投資家を含む多様な市場参加者が参加することによって市場の流動性が高まり、市場が活性化する」「営業の自由が制限されることのない規制とすべき」とする意見書を提出しました。

 安倍政権は、業界の意向そのままに、同年6月14日閣議決定された「規制改革実施計画」に「勧誘等における禁止事項について、顧客保護に留意しつつ市場活性化の観点から検討を行う」という文言を盛り込みます。

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(写真)商品先物取引市場を開設している東京商品取引所=東京都中央区

省令で法律まげる

 これをうけて主務官庁の経産、農水両省は、65歳未満の人への訪問・電話勧誘を原則解禁する商品先物取引法施行規則などの省令の変更を1月23日公布(6月1日施行予定)しています。

 これに対し、日本弁護士連合会は「法律が規定する不招請勧誘禁止を下位の省令で廃止することは違法であり、省令は廃止すべきだ」という声明、意見書を発表。主婦連合会、全国地域婦人団体連絡協議会、日本消費者連盟、全国消費生活相談員協会などもいっせいに抗議しています。

 日本共産党の倉林明子議員は4月7日の参院経済産業委員会で、省令による不招請勧誘解禁をやめるよう政府を追及。「健全な市場活性化に逆行する被害が拡大する前に改正省令は廃止すべきだ」と求めました。(竹腰将弘)


顧客保護しない市場に未来無い

 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長 加藤進一郎弁護士の話 商品先物取引の不招請勧誘禁止は、それまでの各種の規制では被害がなくならないから、法改正で導入したものです。今回の省令変更はこの流れに逆行します。被害救済に取り組む弁護士の実感として、業界の悪質性は変わっておらず、いま不招請勧誘を解禁する理由は全くありません。

 経産省・農水省の市場活性化のためには顧客保護を後退させざるを得ないとする発想が誤っています。顧客保護が不十分な市場に誰が進んで参加するでしょうか。進んで参加してくれる人がいないから不招請勧誘で関心のない人までというのが今回の省令変更で、こんな市場が活性化するはずがありません。

 安心できる市場であることが、市場活性化の大前提です。むしろ不招請勧誘の規制の強化が必要です。いつまでも顧客保護を無視したビジネスモデルに固執し続ける業界や主務官庁には、未来はないと考えています。


商品先物取引

 将来の一定の時点での商品の価格をあらかじめ決め、その時点での商品受け渡しを約束する取引。将来の価格と現在の価格の差を利用してもうけるハイリスク・ハイリターンの投機的取引ですが、専門的知識の乏しい消費者が、しつこい勧誘や「必ずもうかる」という断定的な説明を信じて契約し、多額の損をする被害が相次いでいます。


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