2015年5月13日(水)
第2次世界大戦終結70年
ナチスからの解放 今ドイツは
過去の克服が国の証し
ロンドン経済政治学大学教授 ゼンケ・ナイツェルさんに聞く
第2次世界大戦の終結とナチスからの解放70年は、ドイツでどのようにとらえられているのか―。ドイツと英国の大学で世界史、軍事史を教えてきたゼンケ・ナイツェル氏(現在、ロンドン経済政治学大学教授)に聞きました。 (ベルリン=片岡正明 写真も)
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ナチスからの解放70年を迎えた今年、ドイツは戦後のどの時よりも、自らを肯定的にとらえています。
修正主義許さず
ドイツは(ホロコースト見直しなどの)修正主義を許さず、過去を克服する情け容赦ない取り組みで、すべての犯罪を明らかにするという立場で歴史に向かい合ってきました。その結果、欧州でかつて“殺人国”とされてきたドイツの国民も、今はナチスの犠牲になった国々にも受け入れられています。
私は今、ロンドンで歴史を教えていますが、シンガポールや中国の学生から、ドイツは自動車も素晴らしいが、過去の克服の取り組みはもっと素晴らしいと声をかけられたことがあります。ドイツではまさに、過去の克服の取り組みが、国家・社会の証しとなり、個人の生活にも影響しています。
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ドイツで今、「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(ペギーダ)の策動や、極右による難民住宅放火などの事件があります。ワイマール共和国(1919〜33年)でヒトラーが権力を掌握した過程を思い起こさせると警告する人もいます。しかし私は、危険だが“ヒトラーの再来”というのは過剰な反応だと思います。
ワイマール共和国の民主主義は、最初からボロボロに切り裂かれた状態でした。第1次世界大戦後も、それまでの政治制度はあまり変わらず、王政復古主義者が横行し、古い政党が自分たちの思うようにしようとしていました。
そして何よりも、超インフレと「大恐慌」がワイマール共和国を終わりに追い込みました。人々は危機を乗り越えるために、強い指導者を求めた。それに乗じてヒトラーは政権を掌握したのです。
第2次世界大戦が終結した45年は、第1次世界大戦終結の18年とはまったく違っていました。ナチス・ドイツの完全な敗北、そしてまったく違う時代が来ることは誰にもわかっていました。
敵対から連合へ
ドイツ連邦共和国(当時の西ドイツ)を支えたのは、経済成長だけではありません。(敵対という)力の関係をやめて、他国とともに欧州の連合づくりという共同事業に着手したことも、ドイツを支えました。その構造の中に組み込まれることで、考え方も影響を受けたのです。