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2015年5月11日(月)

ネパール大地震 農業への長期的悪影響も

震源域のゴルカ郡「モミも種も、がれきの下」

国連は食糧不足警告

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 【チョルカテ村(ネパール中部ゴルカ郡)=安川崇】7千人以上の犠牲者を出したネパール中部を震源とする大地震から9日で2週間が経過しました。死者数だけでなく、広範な農村地帯の生活基盤が破壊されており、10年単位の長期にわたる農業生産への悪影響が懸念されています。国連は食糧不足の可能性も警告します。


写真

(写真)地震で倒れた巨木の根を見る農村の住人=9日、ネパール中部ゴルカ郡チョルカテ村(安川崇撮影)

 ネパール中部、震源に近いゴルカ郡チョルカテ村。倒れて村の道路をふさいだ直径1メートルのマンゴーの木を、住民たちが両引きのこで解体していました。電気はこの日ようやく復旧しました。

 シタ・クマルさん(45)は地震発生時、夫とともに畑での作業中で無事でしたが、無人だった自宅は2階が崩れ、住める状態ではありません。

 「50万ルピー(約58万円)かけてやっと建てた家。この年齢から建て直せる見込みはない。他に行く土地もない」。3人の子どもとともに政府が配布したビニールシートの下で過ごします。

 地震は小麦の収穫期が終わり、コメの植え付けを始める時期に襲いました。村の中学教諭ウッタム・バハドゥル・クマル氏(37)が解説します。

 「農家は自宅が崩れ、テントで暮らす。農作業を始められる状況ではない。モミや種も石造りの家の下敷きで探し出せない。植え付け時期を逃せば、次のコメの収穫が失われる」

 国連食糧農業機関(FAO)は、主食であるコメの不足が来年遅くまで続く可能性があると指摘。農作業再開に向けて800万ドル規模の緊急支援が必要だとしています。

 ネパールは人口の65〜70%が農業のみを収入源とする農業国。「農業生産が立ち直らない限り、災害からの復興は非常に困難」(ジャーナリストのクリシュナ・ダンギ氏)です。

家畜被害も打撃

 作物だけでなく、家畜への被害も村落経済への大きな打撃です。農村支援NGO「農村再建ネパール」(RRN)は、全国で50%以上の家畜が死亡したと見積もります。

 RRNのモティ・タパ共同体開発計画チーム代表は「作物は家族が食べる量しかとれない農家が多く、家畜は最大の現金収入源。繁殖させ、肉やミルクを売る。家畜は種やモミよりずっと高価だ。すべてを失った農家が買い戻せる額ではない」と語ります。

生活難で離農も

 生活難から農村を離れ、都市部や中東などの海外に出稼ぎに出る人が増える可能性が指摘されています。経済学者らは、農村での労働力不足が農業の再生をさらに遅らせる「負の循環」を警告します。

 農地そのものが大規模な土砂崩れなどで崩壊している土地も多い。また、遠隔地の農村支援の拠点となるべき各郡の主要都市が壊滅的な被害を受けたケースも多く、思うように支援が行き届かない状態が続きます。

 タパ氏は「テントなどの緊急物資を届けるのに当局は手いっぱいで、長期的な農業再生はまだこれから。ひどいところでは悪影響が10〜15年は続くだろう」とみています。


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