2015年5月5日(火)
ミャンマー メーデー
低賃金・土地没収に抗議
労働者と農民が連帯
メーデーの1日、ミャンマー最大の都市ヤンゴンでは、独立系労働者団体がデモ行進を行いました。そこで掲げられた要求には、現在のミャンマーが直面する多くの問題が現れていました。(伊藤寿庸)
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「労働者の権利擁護機構」という独立系労働団体が市内で行った行進では、「最低賃金は日給5600チャット(約673円)にせよ」、「デモを行って逮捕された労働者を釈放せよ」、「土地取り上げに抗議して逮捕されている農民を全員釈放し、没収した土地を農民に返せ」などという要求が掲げられました。
ミャンマーの労働者の賃金は他のアジア諸国と比べても最低水準です。日本貿易振興機構(ジェトロ)が2013年にアジアの主要都市別に行った調査でも、一般工職の月額賃金で、ヤンゴン53ドル(約6370円)と最低でした。
これは、シンガポールの1230ドルは別格としても、バンコク345ドル、マニラ301ドル、ジャカルタ239ドルなどの5〜6分の1程度。東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で経済発展が遅れているグループにミャンマーとともに属しているカンボジアのプノンペンが74ドル、ラオスのビエンチャンで132ドルですからその低さは際立っています。
ミャンマーでは1962年、クーデターで生まれた軍事政権が一切の労働組合やストなどの争議行為を禁止しました。軍政廃止後に生まれた現政権の下で、2011年に新たな「労働組織法」が国会で可決され、労組結成やストライキの自由が認められました。
2015年末のASEAN共同体設立に向け、経済統合の一環として労働法制の整備が求められているという事情もあります。
しかしこの日の労働団体の催しでは、「法律に基づいて団体登録をしに、役所に行ったところ、役人が『労働組合』という名前はよくないから変えろといった」、「経営者が労働団体の結成を恐れて、組織化のリーダーを解雇した」などと発言しました。
またミャンマーでは、経済の対外開放の中で、工場用地などとして農地が不法に取り上げられる事例が相次いでおり、農民の抗議活動が激しくなっています。
国際的な非政府組織(NGO)「グローバル・ウィットネス」は、3月下旬にミャンマーでの農民からの土地取り上げに関する報告書を発表。中国と国境を接する北東部のシャン州で調査した結果、この10年で210万ヘクタールの土地が没収されたと告発しました。
報告書では、「軍が会社の代表とともに突然村にやってきて、何世代も農民が耕作してきた土地を没収した」などと地元の活動家が証言。地元の資本家によるゴムのプランテーションなどに転用されているといいます。土地を没収された農民の98%は一切の補償を受けていません。
中部のレパダウンで国軍系企業との合弁で中国系企業が進めている銅山開発でも、立ち退きを迫られた農民が2012年以来抗議行動を続けています。
今年のメーデーでは、こうした農民の抗議行動と労働運動との連帯が示されたといえます。
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