2015年4月26日(日)
イエメン空爆1カ月 国民は
「子ども犠牲 武器捨てて」
死者1080人“交渉解決を”
【カイロ=小泉大介】中東のイエメンでサウジアラビア主導のアラブ「連合」軍が反政府勢力・イスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」への空爆を開始してから26日で1カ月が経過しました。「連合」軍は21日に一度は「空爆終了」を宣言しましたが、その後も空爆を含む軍事作戦を継続しています。国民は事態をどう見ているのでしょうか。
イエメンでは2011年の民衆蜂起で、33年間務めたサレハ前大統領が退陣し、翌年の選挙でハディ氏が大統領に当選しました。しかし、北部を拠点とする「フーシ派」が昨年9月に首都サヌアに進出し、2月にはハディ大統領を軟禁状態に置き議会解散と暫定統治機構樹立を宣言したことで危機が一気に深まりました。
ハディ大統領は南部の主要都市アデンに脱出しましたが、「フーシ派」はそこにも攻勢をかけ、大統領はサウジに「亡命」。これを受け、9カ国から成るアラブ「連合」軍の空爆作戦が開始されました。
「フーシ派」が現在も支配するサヌアの商店主、リヤド・オマルさん(37)は本紙の電話取材に対し、「フーシ派は、彼らの支配に反対する平和的デモに銃弾で応えました。国民に選ばれた大統領を力ずくで追い出した彼らはギャングのような存在であり、サウジらによる空爆はしかたないと思う」と述べました。
一方、同じく首都の会社員、アブドラ・モハメドさん(42)は、「フーシ派はほんとうに危険な組織」だとすると同時に、「これまでアラブの多くの国で外国による軍事作戦が行われてきましたが、それが状況をより悪化させることはイラクやリビアなどの事態を見れば明らかです」と強調。「本当の内戦に陥ってしまう前に、なんとか交渉による解決を図ってほしい」と語りました。
国連によれば、この約1カ月間の空爆と戦闘による死者は1080人で、そのうち子どもの死者は少なくとも115人、重傷者は172人に達しています。15万人以上が住む家を追われました。もともとアラブ最貧国だったイエメンは、戦闘による食料や医薬品の不足で人道状況は危機的となっています。
汎アラブ紙ライ・アルヨウムはこの間、イエメンの知識人の見解を紹介しています。そこでは、「軍事作戦の犠牲になるのはいつも子どもたちだ。すべての戦闘当事者が武器をただちに捨て、平和的な解決に足を踏み出すことを心から願う」(作家のワグディ・アフダル氏)、「対話こそが安定をもたらす唯一の方法だ。われわれは殺人を止め、共存の道を選択しなければならない」(詩人のナビル・カッセム氏)など政治解決を求める声が多数派となっています。
「フーシ派」は「空爆終了」宣言を受け、アラブ「連合」軍が軍事作戦を完全に停止すれば、「国連の仲介による政治対話」に臨む意思があると表明しています。