2015年4月14日(火)
米州サミット
米国のキューバ敵視政策を克服
対等な新時代へ
【パナマ市=島田峰隆】キューバが初めて参加した中米パナマでの第7回米州首脳会議(10、11日)は、キューバの孤立化を狙う米国の敵視政策を中南米諸国が乗り越え、異なる政治経済制度の尊重に基づく対等平等な関係を米国に認めさせる新しい時代が始まりつつあることをうかがわせました。
「なお道のり」の指摘も
米政府はキューバ革命政権を崩壊させるために1962年から経済封鎖を実施。今ではキューバ国民の77%は生まれた時から封鎖下で暮らしています。
しかし内政不干渉を定めた国連憲章に違反する経済封鎖は国際社会から批判され、国連総会は昨年までに23年連続で解除を求める決議を採択しています。
孤立したのは米
米州首脳会議は1994年に米国がキューバを排除して始めた会議です。しかし21世紀に入って対米自立の外交を進める中南米諸国が増えるなかで、この会議でも米政府はキューバ排除や経済封鎖の中止を求める声に包囲され始めました。「米国の政策はキューバでなく米国を孤立させてしまった」(ローズ米大統領副補佐官)のです。
今回の会議では、オバマ米政権がキューバとの国交正常化に踏み出し、首脳会議にキューバが参加できたことを中南米諸国は歓迎しました。ただオバマ大統領のいう「対等な関係」を実現するには経済封鎖の解除にまで進むことが不可欠だと指摘。アルゼンチンのフェルナンデス大統領は「間違えないでほしい。キューバが出席できたのは、60年以上も尊厳を求めてたたかってきたからだ」と語り、封鎖解除まで中南米諸国がたたかう決意を表明しました。
自由貿易論消え
米国は米州自由貿易地域(FTAA)をつくり、米国の影響力を広げることを目的に米州首脳会議を始めました。しかし2005年の第4回首脳会議では、経済格差の激しい米州全体で一気に自由貿易に進むやり方にブラジルやアルゼンチンが反発。意見はまとまらず、最終宣言は賛成と反対の両論を併記し、これを機にFTAAの議論はほぼ姿を消しました。
今回の会議でも中南米諸国は、極端な自由貿易など米国や国際通貨基金(IMF)が押し付けてきた政策を転換し、独自の社会政策を通じて雇用増や貧困削減、医療や教育制度の充実を進めている成果を強調しました。
オバマ氏は首脳会議に先立って訪問したカリブ海のジャマイカで次のように語り、事実上、中南米諸国の主張の正しさを認めました。
「IMFや国際機関は各国政府との間で必ずしも生産的ではない方法をとってきた」「必要なのは、どう経済を成長させ、国民を締め付けるだけにしないかということだ」
オバマ氏は09年の米州首脳会議で打ち出した「相互尊重に基づく平等なパートナーとして協力する新しい時代」を再度強調しました。また「米国の歴史には暗い章もあった」と反省を語り、キューバとの国交正常化を進めて中南米全体との関係で「転換点」をもたらす意欲を示しました。
ただキューバの人権や民主主義を問題にする方針や対ベネズエラ制裁は変えていません。メキシコ紙ホルナダは今回の会議について「米州関係の新しい章」だとする一方で、「今回は出発点にすぎない」「対等な米州にはまだ道のりがある」と指摘しました。オバマ政権や米議会、次期政権がこの声にどう応えるのか問われます。