2015年4月7日(火)
育鵬社と自由社の教科書
憲法敵視、改憲へ誘導 引き続き侵略戦争美化
安倍政権が「海外で戦争する国」づくりへ暴走を続けるなか、育鵬社と自由社の歴史教科書、育鵬社の公民教科書は、「戦争する国」づくりへ、ゆがんだ歴史認識を持ち込むものとなっています。
「義務」を強調
育鵬社の公民は、戦前の大日本帝国憲法は高く評価する一方、現行憲法を敵視し、改憲へ誘導しています。
日本国憲法がうたう基本的人権では、現行教科書にあった「憲法に保障された権利と自由が次の世代にも受け継がれるように努力しなければなりません」の文言は削除。教育・勤労・納税を「国民の義務」と強調し、脚注では、「多くの国の憲法では国防の義務を課してい」ると新たに挿入しました。
「平和主義」の単元では、記述の大半を自衛隊に割き、他国の憲法を引きながら「国防の義務」を強調。自衛隊には違憲論もあると述べていた脚注は削除しました。
「集団的自衛権」は、「同盟関係にある国の防衛を支援し、おたがいに協力しようとする権利」と述べ、現行本の「自衛」の表現を「防衛」に書き換えました。
「平和主義と防衛」の単元を挿入し、コラム「沖縄と基地」のなかで、「日米安保体制は日本の防衛の柱であり、アジア太平洋地域の平和と安全に不可欠」と記述。住民の苦悩や基地撤去を求める運動には一切触れず、「普天間飛行場の辺野古への移設などを進めています」と、安倍政権の主張を伝えています。
「公民」とは「公の一員として考え、公のために行動できる人」だと述べ、前回以上に「公」を強調。改悪教育基本法を反映させ「愛国心」を太字で示し、右傾化を強めています。
右傾化強める
歴史は、育鵬社、自由社ともに、侵略戦争を美化し“日本は正しい戦争を行った”とする認識を子どもたちに持ち込むものです。
アジア・太平洋諸国で2000万人以上の犠牲をもたらした日本の侵略戦争について、「自存自衛」(育鵬社)で、日本の侵略が「東南アジアやインドの人々への独立への希望」になったと強調。自由社も、占領期には「のちの独立の基礎となる多くの改革がなされた」などと日本軍を“アジアの解放者”として描きます。
“勝者の裁き”を強調する東京裁判や、昭和天皇美化のコラムも現行教科書と変わりません。育鵬社版では、東京裁判の判決を日本政府が受け入れていることへの言及がなかったため検定意見が付き、修正に追い込まれました。 (教科書問題取材班)
教科書検定
教科書会社が編集した申請図書が改悪教育基本法に示す教育の目標、学習指導要領に沿っているかなどを文部科学省が点検する制度。実際の審査は教科書調査官が行い、学者などからなる教科用図書検定調査審議会の審議をへて、教科書会社に検定意見を出して修正させます。世論と運動で恣意(しい)的な検定を一定改善させてきましたが、安倍政権のもとで検定基準などの改悪が行われました。