2015年4月3日(金)
大学総長 卒業生に平和への思い
新年度になり、街なかや電車などで、フレッシュな姿を見かけますが、この人たちを送り出した大学の卒業式での祝辞には、熱い思いが込められていました。いくつかを紹介すると―。
「悲劇なぜ」見つめて
○…「今年は、戦後70年という特別な年です」とのべた法政大学の田中優子総長は、同大が、卒業生在学中に「学徒出陣」をテーマにしたシンポジウムと展覧会を開催したことにふれ、「戦争中は学校が閉鎖され、大学生は兵士としてかり出されました。総長である私が、『お国のため』と称してあなたがたを戦場に送ることを想像してみてください。それは現実に起こったのです」と話しました。
田中氏は、「若者に過酷な道を歩ませた責任の重みを忘れることなく、この悲劇をもたらしたものをしっかりと見つめる」と誓った前総長の「平和の誓い」を受け継ぎ、次の総長に手渡すと決意を表明。「自分だけでなく社会全体の理想の未来を思い描き、それに向かって日々の仕事を全うすること」を呼びかけました。
「裸の王様」になるな
○…京都大学の山極壽一総長は、「忘れてはならないことは、自分と考えの違う人の意見をしっかりと聞くことです。しかも複数の人の意見を踏まえ、直面している課題に最終的に自分の判断を下して立ち向かうことが必要です」と強調。「自分を支持してくる人の意見ばかりを聞いていれば、やがては裸の王様になって判断は鈍ります」と注意を促しました。
改憲の動きに警告
○…「安倍首相の憲法改正の意欲は並々ならぬものがありまして」と改憲の動きに警告を発したのは、同志社の大谷實総長です。
自民党の憲法草案が憲法に規定された「個人の尊重」という文言は改められて、「人の尊重」となっているのは、「個人主義を助長してきた嫌いがあるので改める」というものだとして、「これまで明確に否定されてきた全体主義への転換を目指している」と強調。「個人主義こそ民主主義、人権主義、平和主義を支える原点」「遅かれ早かれ憲法改正問題に直面することと存じますが、熟慮に熟慮を重ねて、最終的に判断していただきたい」と要望しています。