2015年4月2日(木)
ティクリート奪還
イラク首相 過激組織ISから
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【カイロ=小泉大介】イラクのアバディ首相は3月31日の声明で、過激組織ISが支配していた北中部の都市ティクリートが政府軍などにより「解放された」と宣言し、「歴史的画期をなすものだ」と称賛しました。この間のIS掃討作戦としては最大の戦果となりますが、政府と軍が同地での今後の対応を誤れば、「宗派対立」を激化させる危険性も出てきます。
ISは昨年6月に北部の主要都市モスルを電撃的に制圧した後にすぐさま南下し、同市も支配下に置きました。イラク軍とイスラム教シーア派民兵の混合部隊は3月2日に約3万の兵力で同地の奪還作戦を開始。31日にISが拠点としていた中心部のサラハディン州政府庁舎などを相次ぎ制圧しました。
混合部隊は奪還作戦開始から10日ほどでティクリートをほぼ包囲しましたが、その後はIS側の激しい狙撃や地雷攻撃を受けこう着状態に陥りました。25日に米軍主導の「有志連合」が空爆による支援を開始したことを受け、中心部に一気に進軍したもようです。
同市はイスラム教スンニ派が大多数を占める都市で、同派を自称するISを支持する住民も少なくないとされます。「解放」後もIS戦闘員が住民にまぎれて潜伏しているのは確実で、シーア派主体の混合部隊が完全制圧を口実に徹底した家宅捜索や弾圧を行えば、「宗派対立」の激化が不可避となります。すでにティクリート周辺では、住民がシーア派民兵から迫害されたり、住居を焼き払われたりしたとの告発が相次いでいます。
イラク国防省は31日、「今回の勝利はさらなる作戦の始まりにすぎない」と声明。今後はISの最大拠点であるモスルの奪還作戦に乗り出す構えです。