2015年3月19日(木)
英国 最賃3%引き上げ
今年10月から 時給1200円に
【パリ=島崎桂】英国のキャメロン首相は17日、今年10月から最低賃金を3%引き上げ、時給6・7ポンド(約1200円)にすると発表しました。実質的な賃上げとしては、2008年以来で最大の引き上げ幅となります。
同国の最低賃金は年齢により差が設けられています。今回の発表では、20歳以下も3%増(時給5・3ポンド)となったほか、17歳以下では2%増(同3・87ポンド)、低賃金で働く見習生では20%増(3・3ポンド)を決めました。同国では労働者の約5%が最低賃金水準で生活しています。
キャメロン氏は発表にあたり、「家計がさらに安定し、英国により良い未来をもたらす」と指摘。キャメロン氏率いる保守党と連立を組む自由民主党のクレッグ党首(副首相)は、「政府は懸命に働く人々の側にいる」と述べました。
キャメロン政権はこれまで、企業競争力の強化を見込み、低賃金政策を実施。賃上げ幅は物価上昇率(インフレ率)を下回り、国民にとっては実質的な賃下げが続いてきました。
今年5月に総選挙を控える中での賃上げ発表についてロイター通信は、「国内経済の強さをアピールする狙いがある」と論評。賃上げを報じた同国メディアのホームページには、「選挙対策だ」などの意見も寄せられています。
ロンドン市当局などが算出した「生活賃金」(最低限安定した生活を保障する賃金)は、ロンドンで時給9・15ポンド、その他の地域では同7・85ポンドとなっています。
総選挙で政権交代を狙う野党労働党のウムンナ議員は、最低賃金を時給7ポンドに引き上げるとしていた政府の公約違反を指摘。「キャメロン政権下で最低賃金の価値は損なわれてきた。働く人々のために(最低賃金の価値を)回復しなければならない」と訴えました。同党は、20年までに時給8ポンドへの引き上げを公約に掲げています。