2015年3月15日(日)
インド・スリランカ「新時代」
モディ印首相 28年ぶり訪問
【ニューデリー=安川崇】インドのモディ首相が13日、スリランカを訪問し、同国のシリセナ新大統領と会談しました。国際会議を除いて、インド首相がスリランカを訪れるのは28年ぶり。両国外交の「新時代」(地元メディア)に期待の声が上がっています。
コロンボでの首脳会談後、モディ氏は「シリセナ大統領は先月訪印した。そのすぐ後に私がここへ来れたことをうれしく思う。隣国関係はこうあるべきだ」との声明を発表。シリセナ氏も一連の訪問が「2国間協力の新しいページを開く」と強調しました。
印首相による前回の訪問は1987年、ラジブ・ガンジー首相の時代。当時、スリランカでは少数派タミル人の分離国家樹立を目指すタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)と政府軍との内戦が激化しつつありました。
タミル人はインド南部のタミルナド州などにも多く住んでおり、互いに強い同胞感情を持っています。当時、タミル政党の突き上げを受けたガンジー氏はスリランカ内戦への介入を決め、同国を訪問。LTTEの武装解除を目指してインド平和維持軍(IPKF)を派遣しました。しかし戦闘は泥沼化し、インド軍は90年までに撤退します。
翌年、インド総選挙の遊説中にガンジー氏(当時は野党)は暗殺され、警察はLTTEの犯行と発表。IPKF派遣への報復だったとみられています。これが外交的な「傷」となり、以来、首相訪問は途絶えました。
一方、今回の訪問実現の背景には、スリランカ側の政治環境の変化もあります。
同国のラジャパクサ前大統領は、内戦を武力終結させる段階で多数のタミル人民間人を死亡させたとして欧米が強く批判。これに反発する中で前政権は中国との連携を強めていったとされます。
これに対し「少数派との和解」を掲げて選挙に勝利したシリセナ大統領は、欧米やインドとの関係正常化を表明していました。
モディ氏は今回、印首相として初めてタミル人が多く住む北部のジャフナも訪問。両国間には漁業権をめぐるトラブルなどの懸案事項もありますが、両首脳は「長期的解決策を探る」との意志を示しています。