2015年3月13日(金)
辺野古沖掘削再開
政府、「粛々」の裏に焦り
「粛々、淡々と進めさせていただく」。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に向けた海底掘削(ボーリング)調査再開について問われた菅義偉官房長官は12日の記者会見でこう述べ、今年夏を想定して本体工事着工へ突き進む考えを示しましたが、強権ぶりの背景には、新基地建設が思いどおりに進んでいないことへの焦りがあります。 (竹下岳)
当初予定から大幅に遅延
まず、ボーリング調査自体が大きく遅れています。沖縄防衛局は昨年1月に入札した21カ所のボーリング調査を昨年11月までに終える予定でしたが、台風や知事選・総選挙などで今年3月まで中断。現時点で9カ所残っています。
加えて、昨年10月に3カ所の調査を追加。合計12カ所残っています。防衛局は「3月末までの完了」方針を崩していませんが、実際は6月ごろまでかかる見通しです。
一方、沖縄県は、防衛局が辺野古沖に投下したブイ(浮標)などを固定する巨大ブロックがサンゴ礁を破壊しており、県が昨年8月に出した岩礁破砕許可を逸脱している可能性があるとして、許可の取り消しを検討しています。その場合、「岩礁破砕」行為であるボーリング調査の強行は困難になります。
承認取り消しで根拠消滅
仮に政府がボーリング調査を強行しても、実施設計の段階で県と協議することになっています。この段階で県側の抵抗があります。
また、実施設計で建設計画の変更の必要性が生じた場合、公有水面埋立法に基づき、県に変更を申請して承認を得る必要があります。岩国基地(山口県)の滑走路沖合移設(1997〜2008年)の場合、政府は8回の変更申請を出し、その都度、県と協議して承認を得ていました。
さらに、沖縄県の第三者委員会は仲井真前県政が13年12月に行った辺野古の埋め立て承認の「法的な瑕疵(かし)」を検討しています。翁長雄志知事は同委員会が7月に提出する報告書を基に、承認の取り消し・撤回を判断します。その場合、新基地建設の法的根拠は消滅して工事は止まります。政府による訴訟も予想されますが、少なくとも裁判の期間、政府は何もできません。
菅長官は12日の会見で「瑕疵があれば別だが、なければ粛々と進める」と述べました。裏返せば、「瑕疵」を認定されれば工事を止めざるを得ないと認めた発言です。
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