2015年3月2日(月)
ロシア野党指導者暗殺
市民ら抗議 欧米も非難
“軍介入の証拠持っていた”ウクライナ大統領
【パリ=島崎桂】ロシアで2月27日に反プーチン大統領派の野党指導者ボリス・ネムツォフ氏が暗殺された事件を受け、モスクワ中心部の赤の広場からほど近い犯行現場に、数千人の市民が花を供えて、同氏の死を悼みました。市民からは「ネムツォフ氏が殺されたのは、民主主義が殺されたのと同じ」などと事件への強い抗議が広がっています。欧米各国首脳も、一斉に暗殺を非難し、ロシア当局に徹底捜査を求めました。
ロシア大統領府によると、プーチン氏は2月28日、内務省や治安当局など関係機関に対し、暗殺事件の調査グループ創設を指示。「残酷な殺害」に対する「深い哀悼の意」を表明しました。
犯人像についてさまざまな臆測が飛び交う中で、ウクライナのポロシェンコ大統領は28日、同氏がロシア政府によるウクライナへの軍事介入の証拠を明らかにしようとしたことが原因だったとの見方を示しました。
現地テレビのインタビューに答えたなかで、ポロシェンコ氏は「ネムツォフ氏は、ロシア軍のウクライナ介入に関する説得力のある証拠を提示すると語っていた」と指摘。「証拠提示を恐れた誰かが、ネムツォフ氏を殺した」と述べました。
ウクライナ政府や欧米諸国、北大西洋条約機構(NATO)などは、かねてからウクライナ東部での紛争にロシア軍が直接介入してきたと非難してきました。
他方、ロシアのプーチン大統領は、ロシア人「義勇兵」による親ロシア派勢力の支援は認めているものの、正規軍の派遣については否定しています。
今回の暗殺事件には、欧米諸国を中心に各国から非難の声が上がっています。ウクライナ問題をめぐり欧米諸国とロシアの溝が深まる中、ロシア政府の対応次第では双方の関係がさらに悪化する可能性もあります。
オバマ米大統領は27日、ネムツォフ氏を「ロシアで腐敗とのたたかいに勇気ある献身をおこなった」人物とたたえつつ、「残忍な殺人を非難する。ロシア政府に対し、速やかで、公平かつ透明性ある捜査を求める」と述べました。
欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)は、ネムツォフ氏を「民主的なロシアの力強い支援者だった」と評し、暗殺への「怒りと深い悲しみ」を表明。ロシアに対し、暗殺に関する「迅速で透明性のある完全な調査」を求めました。
キャメロン英首相は、「ロシア国民は彼らの権利の擁護者を失った」と指摘。他の欧州首脳も「卑劣な殺人」(メルケル独首相)、「おぞましい暗殺」(オランド仏大統領)などと暗殺を非難しました。
同様に、ウクライナ危機以降、ロシアへの警戒を強めるポーランドやリトアニア政府からも、暗殺を非難し、徹底した調査を求める声が上がっています。