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2015年2月10日(火)

おおすみ衝突・安全委報告

海自艦が針路・速力変えず 釣り船が右に曲がり近づく

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 昨年1月15日に広島県沖の瀬戸内海で発生した海上自衛隊の大型輸送艦おおすみ(田中久行艦長)が、釣り船とびうお(高森昶船長)に衝突し転覆させ、船長と釣り客の3人を死傷させた事故について国土交通省の運輸安全委員会は9日、海自輸送艦が針路・速力を変えずに航行し、釣り船が右に曲がり近づいたことが重なり、衝突したとする調査報告書を公表しました。


「自衛艦減速で回避できた」 釣り船乗船者「右転していない」

 運輸安全委員会は、とびうおが右に進んだが、自衛艦がより早い段階での大幅な減速などの対応をとれば衝突を回避できた可能性があると指摘しました。

 事故は広島県呉市の呉港から岡山県玉野市の造船所に向けて南進中の輸送艦おおすみと、広島市から同県大竹市阿多田島南方の甲島沖に向けて南南西進中の釣り船とびうおが午前8時ごろ、阿多田島東方沖で衝突したもの。

強く反発

 運輸安全委員会の報告に対し、釣り客関係者は「『釣り船が右転した』とは到底納得できない」と強く反発しています。

 とびうおに同乗、衝突で海に投げ出されながら救出された釣り客の寺岡章二さん(68)は「おおすみはとびうおの斜め後ろからついてきた。とびうおは右転はしていない」と怒りをあらわにしています。

 海難事故に詳しい田川俊一弁護士は、衝突の約5分前のおおすみの針路変更(航跡図参照)とおおすみの速力17ノットに注目します。

 この速力は、作戦命令による速力段階では最高速度になります。瀬戸内海などの船舶が混雑する海域では通常速度は12ノットとされています。

 「変針した時はとびうおとの距離は約1キロです。距離的には危険が予測される『見合い関係』に入っている。左舷前方にとびうおが確認されている時点での針路変更には見張りなどの安全確認を一段と強めなければならない」と指摘します。

 さらにとびうおの、おおすみの前方へ向かっての右転についても、疑問を投げかけます。とびうおはそのまま進行すると釣り場に行き着きます。ここで右転する必要は何もありません。

見落とす

 さらに田川弁護士は船舶が互いに接近して航そうした場合におきるシーソウィング、相互作用の現象を指摘します。

 これらの現象により減速したり、回頭したり、引きつけられたりします。相手船が小型船の場合、特にこれが顕著になります。

 田川弁護士は、「運輸安全委員会はこの二つの作用を見落としているのではないか」と強調します。

 この衝突事故について広島海上保安本部は昨年6月に、自衛艦の艦長と航海長、とびうお船長を業務上往来危険、同過失致死傷の容疑で書類送検しています。広島地検は捜査中として起訴判断は示していません。

 昨年、艦長らを同容疑で告発した「自衛艦おおすみ衝突事件の被害者を支援し真相究明を求める会」は同報告書を受け、近く広島地検に海自艦長らの早期起訴を求める上申書を提出するとしています。

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