2015年2月7日(土)
チュニジア政府発足
世俗派、イスラムの「大連立」
【カイロ=小泉大介】チュニジアで5日、シド次期首相提案の閣僚名簿を議会(定数217)が賛成多数で承認し、正式政府が発足しました。2011年はじめの「革命」でベンアリ独裁体制が倒れた同国は、4年間の移行プロセスをへて、本格的な国づくりに足を踏み出しました。
チュニジアでは、昨年末の大統領選挙で世俗派政党「チュニジアの呼び掛け」を率いるカイドセブシ氏が当選。これを受け、同氏は1月5日に独立系で「革命」直後の時期に内相を務めたシド氏を首相に指名し組閣を要請しました。
外相や財務相など重要閣僚は、昨年10月の議会選挙で第1党となった「チュニジアの呼び掛け」(85議席)が占める一方、第2党のイスラム主義組織アンナハダ(69議席)と二つの世俗派小政党にも閣僚ポストが割り当てられました。
「革命」後のチュニジアでは、制憲議会選挙(11年10月)で第1党となったアンナハダが暫定政府を主導しましたが、世俗派野党との間で激しい対立が発生し、移行プロセスは大幅に遅れました。正式政府樹立にあたってはアンナハダを加えるかどうかが最大の焦点となり、紆余(うよ)曲折の結果、「大連立」の形となりました。
首都チュニスの女性会社員、ラニア・モハメドさん(25)は本紙に対し、「イスラム勢力を含む複数党による連立政権がチュニジアの安定と民主主義の確立のためには必要です」と述べ「大連立」を評価しました。
一方、北東部ナブールの男性公務員、タウフィク・ベンハモーダさん(43)は、「ベンアリ時代の政治家を含む『チュニジアの呼び掛け』と、革命後の混乱の責任者であるアンナハダの連立では政治はよくならない」と否定的です。
チュニジアの前途には、15%と高止まっている失業率の改善や物価高騰の抑制など経済改革、イスラム過激思想の台頭による治安悪化の克服など課題が山積しています。
シド新首相は5日の議会演説で、「新政府の第一課題はテロとたたかい治安を回復することだ」と述べるとともに、「尊厳、平等、雇用、社会保障という革命の目標を達成するために力を尽くす」と表明しました。
新政府の行方について政治評論家のヌール・ムバルキ氏(50)は、「連立参加の各党の立場には大きな違いがあり、楽観することはできません。成功するかどうかは、各党が革命に託した国民の願いを自らの利益の上に置く姿勢を貫けるかどうかにかかっています」と強調しました。