2015年2月6日(金)
帰還兵への支援強める
米上院 自殺防止法案を可決
【ワシントン=島田峰隆】イラクやアフガニスタンでの戦争から帰還した退役米兵の間に精神疾患が広がり、多数の自殺者が出ている問題で、米上院は3日、帰還兵への支援を強める自殺防止法案を全会一致で可決しました。下院はすでに可決しており、オバマ大統領の署名を経て成立する見込みです。
法案は超党派の議員が提出しました。政府の統計によると、米国では1日平均で22人の退役米兵が自殺しています。戦地で経験した戦闘の恐怖からうつ病などの精神疾患にかかることが主要な原因の一つとされます。
法案は退役軍人省に対し▽帰還兵のメンタルヘルス問題に関する情報を提供する双方向型のウェブサイトを創設▽精神科医など専門家の不足を解消するため学生ローン返済プログラムを医学生に提供する計画を試験的に実施―などを求めています。自殺防止策が機能しているかどうか点検、助言する仕組みもつくるとしています。
退役軍人とその家族でつくる団体「全米イラク・アフガニスタン帰還兵」(IAVA)は3日の発表文書で「法案は多くの帰還兵に新しい希望を与える」と歓迎しました。また「われわれはこうした行動が必要になった厳しい現実を思い起こさなければならない。目に見えない戦争の傷と、国による当初の対策の失敗だ」と指摘しました。
IAVAが昨年、イラクとアフガンの帰還兵を対象に行ったアンケート調査によると、回答者の31%が自殺を考えたことがあると回答。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患を患っていると答えた人は53%でした。