2015年1月29日(木)
「イスラム国」3回の動画 どうみる
拘束されている後藤健二さんとみられる男性の音声付き画像が27日午後11時ごろ、インターネット上で確認されました。1週間という短期間に3回もメッセージを出したことになり、日本人殺害に向けた強い警告とともに、活動するイラクやシリアで支配地域を相次いで奪還されたことで、求心力を回復しようと成果を急ぐ「イスラム国」の焦りも浮かび上がります。
日本・ヨルダン揺さぶる
過激組織「イスラム国」が出したとされる1回目の動画は、画像の冒頭に、安倍首相が登場するニュース画像を挿入し、「イスラム国」のメンバーとみられる男が後藤さんと湯川遥菜(はるな)さんをひざまずかせて要求を語る映像となっています。左上には、「イスラム国」の公式映像を表すロゴ(印)も表示されています。
一方、2回目、3回目の動画に「公式ロゴ」はなく、映像も音声付きの静止画となっており、急いで作成した様子がうかがえます。
1回目の動画で示した要求は2億ドル(約236億円)の身代金でしたが、2回目からヨルダンに収監中の自爆テロ実行犯、サジダ・リシャウィ死刑囚の釈放に変化。湯川さんを殺害したとみられる画像も示し、強い衝撃を与えました。
さらに、3回目の動画では24時間の期限を提示。要求が期限内に満たされなければ後藤氏を殺害することを警告しました。さらに、ヨルダン政府が、ヨルダン人パイロットの解放を「イスラム国」に求めているのをとらえ、「パイロットに残された時間はそれよりも短い」と警告の度合いを増し、日本政府に圧力をかけ、ヨルダン政府を揺さぶっています。
死刑囚解放 固執の背景
「イスラム国」がリシャウィ死刑囚の解放に固執する背景は何か。イスラム世界に詳しい高橋和夫・放送大学教授は、「死刑囚は『イスラム国』の源流グループを率いたザルカウィ周辺にいた人物。『イスラム国』を率いるバグダディもザルカウィのもとにいたので、死刑囚とは同志的つながりがある」と指摘します。
「イスラム国」は支配地域のイラク中部ディヤラ州のほか、4カ月以上にわたりクルド人部隊などと激戦が続いていたシリア北部アインアルアラブを最近失ったと伝えられます。高橋教授は「『イスラム国』という戦闘集団からしてみると、たたかってつかまった同志を何が何でも取り返すことで、戦闘集団の士気を高めたい、組織としての求心力を高めようということだ」と語ります。
現代イスラム研究センターの宮田律理事長は、「『イスラム国』は日本の動きをよく見ている。安倍首相が述べた金額を身代金の額にして皮肉っていたが、ヨルダンに対策本部を置いたら、この死刑囚の解放を求めてきた。本部をトルコに置いたら、違った対応をしていたかもしれない」と語っています。