2015年1月18日(日)
仏風刺紙特別号
表紙絵めぐり批判と論争
フランスの風刺週刊紙シャルリエブドが銃撃事件後初めて発行した特別号の表紙で再びイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を載せ、新たな世界的な論争を呼んでいます。世界各地のイスラム教徒の抗議に加えて、表現そのものに厳しい評価を下す識者も少なくありません。
英紙ガーディアン13日付(以下新聞はいずれも電子版)は、特別号の表紙絵について、「発行にこぎつけたこと自体が称賛に値する」などの3人の擁護論とともに同数の反対論を掲載。
ある女性作家は、シャルリエブド紙が「国家がイスラム教徒の自由の制限を強化するのを補強してきた」とし、「人種差別を助長するステレオタイプを絵の中で使用してきた」といいます。
ガーディアン紙論説欄のジョゼフ・ハーカー副編集長は、ムハンマドを描いて「世界のイスラム教徒を意図的に傷つけた」上に、「私はシャルリ」のプラカードを持たせることで「預言者が同紙の価値観を支持していると主張し、傷に塩を擦り込んでいる」と批判。「今こそ過激主義の殺人者たちを孤立させ、国民を団結させて、前進すべき時だ。自分の権利を振りかざして他者の感情を踏みにじり、友人を失うべき時ではない」と呼び掛けました。
米紙ロサンゼルス・タイムズ9日付では、風刺画家でコラムニストのデービッド・ホーシー氏が「シャルリ」紙の傾向について「毎号毎号、政治家だけでなく、既成宗教の肖像や偶像を攻撃する、単純化した風刺画を掲載してきた」と指摘。殺された同紙編集長がタブーに挑んだ姿勢を「評価」しながらも、同紙の絵について「粗野で下品で幼稚」とし、「攻撃のための攻撃というのは私のスタイルではない」と一線を画しています。(伊藤寿庸)