2015年1月15日(木)
仏週刊紙が特別号 預言者風刺画 再び掲載
イスラム教徒は反発
【パリ=島崎桂】今月7日に過激派の襲撃を受けて多数の死者を出したフランスの風刺週刊紙シャルリエブドは14日、連続テロ事件以降初となる特別号を発行しました。表紙にイスラム教の預言者ムハンマドを描いた風刺画をあえて掲載したうえで、大幅に増刷し、ウェブ版を含め複数の言語で発行するとしています。すでにエジプトのイスラム教の権威が厳しく批判しており、フランス国内だけでなく、世界のイスラム教徒の反発を呼ぶのは必至。「言論の自由」のあり方としても国際的な批判が起こっています。
この日発売されたシャルリエブド最新号は表紙で、「全ては許される」との文字と合わせ、ムハンマドが、反テロと表現の自由を示すスローガン「私はシャルリ」と書かれたプラカードを持って涙を流す風刺画を掲載しました。
イスラム教では預言者ムハンマドの肖像を描くことは禁じられていますが、同紙のジェラール・ビアール主筆は最新号の編集会議で、「(テロの)脅迫には屈しない」として、「これまでと同じ精神に基づく紙面」をつくると表明したと報じられています。
最新号は、従来6万部(実売は3万程度)の発行部数を300万部に引き上げます。うち30万部は、アラビア語、トルコ語を含む16言語、25カ国で販売。8週間にわたり店頭に並ぶといいます。
フランス・イスラム評議会(CFCM)は13日、同国に住む約500万人のイスラム教徒に対し、「感情的な反応を避け、平静を保ってほしい」と呼び掛けました。
シャルリエブド紙がこれまでもムハンマドの風刺画を繰り返し掲載してきたことについては、過激主義者以外の一般のイスラム教徒も批判。イスラム教徒の多い地域の中等学校で、連続テロ事件犠牲者への黙とうを拒否した生徒が多数いたとも報じられるだけに、「挑発的」ともいえる最新号がフランスの移民社会に与える影響が懸念されています。
他方、仏市民からは、「テロに屈して(編集)方針を変える必要はない」(60代男性)などの声が多く聞かれました。
報道の権利に詳しいジャンイブ・デュプー弁護士は仏ラジオに対し、「フランスでは、表現の自由は原則だ」とした上で、特定の人種や宗教への侮辱は表現の自由の制限理由になり得ると指摘。一方で、過去に同紙によるムハンマドの風刺画が訴訟となった際、仏裁判所は、他国メディアが同様の風刺画を掲載していたことを理由に無罪と判断したとのべました。
新たな風刺画の掲載を受け、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)など複数のテロ組織が新たなテロを予告しています。