2015年1月14日(水)
ベトナム戦争 枯れ葉剤散布
米予備役も健康被害
汚染機使用 戦後も拡大
【ワシントン=洞口昇幸】ベトナム戦争で米軍が同国土に大量に散布し、数百万人の健康被害や次世代に奇形・障害などの後遺症をもたらしている枯れ葉剤が、同戦争後に枯れ葉剤散布に汚染された米軍機に乗った予備役にも、健康に悪影響を与えたとする報告書が9日、発表されました。
研究所が報告書
報告書を出したのは議会や政府に医療や健康について助言する独立学術機関、米国医学研究所(IOM)。
ベトナム戦争で米軍は大量の枯れ葉剤を空から散布しました。枯れ葉剤にはダイオキシンの中でも最強の毒性を持つとされる2、3、7、8四塩素化ダイオキシン(TCDD)が含まれていました。このため、ベトナムの人々に多くの被害をもたらしているだけでなく、作戦に従事した米軍兵士にも被害が出ています。
発表によると、毒性が非常に強いダイオキシン類を含む枯れ葉剤を散布する作戦で使われた米空軍輸送機C123の24機は、同戦争後に四つの空軍部隊に振り分けられ、1972年から82年の間に、約1500〜2100人の予備役がこれらの輸送機を使って訓練や輸送にあたりました。
報告書を作成した委員会は、79年から2009年にこれら輸送機の一部を調査し、TCDDを検出。データ・情報が限定的なことから、ダイオキシン類の暴露量を正確に推定するのは不可能とするものの、抽出されたダイオキシン類の残留度の高さは、予備役の健康が悪化する危険を増大させるものだとしました。
同予備役の一部の人は、ベトナム帰還兵対象の枯れ葉剤被害の救済法(91年)に基づいて補償を申請。退役軍人省は帰還兵ではないことなどから予備役は補償の対象外にしました。退役軍人の団体からは同省の見解の見直しの声が上がっていました。
今回の調査は同省の依頼によるものです。