2015年1月12日(月)
イスラム メディアが指摘
宗教や文明間の対話
中東軍事介入の中止
【カイロ=小泉大介】パリの新聞社襲撃事件とその後の事態をめぐり、中東・イスラム世界のメディアでは、残虐なテロ行為は断じて許せないとの非難とともに、問題の根本的解決のためには欧州でのイスラム教徒排斥の動きや、欧米諸国による中東への軍事介入が中止されなければならないとする論調が目立ってきています。
問題の根本解決へ提言
エジプトの政府系紙アルアハラム10日付の論評記事は冒頭で、「新聞社を狙った卑劣なテロは、どんな言葉をもってしても非難しつくせるものではない」「いかなる口実によってもこの行為を正当化できるものではない」と強調しました。
そのうえで、「フランスを含む欧州で広がるイスラム嫌悪感情」の問題を指摘。「アルジェリアやモロッコなどからのイスラム系移民がフランス国民として同化しようとしても、一部は排除され居場所を得られない状況となっており、それが彼らをもっぱら宗教による自己規定に走らせている」と強調しました。
結論として同記事はアラブやイスラム社会に対しては「イスラム教は寛容と穏健の宗教でありテロや過激主義とは無縁のものであるという理解を確立するため努力する」こと、欧米をはじめとする国際社会に対しては「イスラム敵視をやめ、異なる宗教・文明間の対話を促進する」ことを求めました。
一方、中東の著名なジャーナリストで、長くロンドン発行の汎アラブ紙アルクッズ・アルアラビの編集長を務めたアブデル・バリ・アトワン氏はさまざまなメディアで、「意見の違いにより他者を殺害することは絶対に正当化できない」としつつ、襲撃された新聞社の反イスラムの立場はレッドライン(越えてはならない一線)を越えていたとも指摘しています。
さらに、「フランスを含む西欧諸国が中東に軍事介入していることが、イスラム過激組織によるメンバー獲得を容易にしている」と主張。北大西洋条約機構(NATO)軍の介入でカダフィ独裁体制が倒れたリビアやイラク、アフガニスタンの例を上げながら、「イスラム諸国に対する西欧の政策が、無辜(むこ)のイスラム教徒の多数の死に加えて地域の分断と混乱、そして過激派の台頭をもたらしている」と警告します。
アトワン氏は欧米各国政府に対し、「正義、平等、共存の精神にもとづく政策を採用し軍事介入を自制することが必要だ。これ以上、イスラム教徒を扇動することがないよう望む」と訴えています。