2015年1月1日(木)
ギリシャ議会解散
反緊縮の「対案」に期待
急進左派連合への政権交代有力
【パリ=島崎桂】ギリシャ議会は12月31日、大統領選出の否決(29日)を受けて解散しました。総選挙の投票日は1月25日。緊縮策の失敗も明らかになる中、反緊縮を掲げる最大野党、急進左派連合(SYRIZA)の「対案」に期待が高まっています。
欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3機関(通称トロイカ)は2010年、欧州債務危機の発端となったギリシャの「救済プラン」を作成し、同国への融資を開始。融資条件として、財政赤字の削減に向けた大幅な増税や歳出削減など、極度の緊縮策を求めました。
国民の不満増大
一連の緊縮策により同国は深刻な不況に陥り、失業率は09年の9%から25%に上昇。25歳以下では50%に達しています。医療予算の削減は大量の無保険者を生み、貧困を背景とした自殺者も急増しています。
加えて、同国の国内総生産(GDP)は09年比で約25%減少。同期間の財政赤字は、対GDP比で115%から175%に増加するなど、トロイカが期待したものとは逆の結果となっています。
国民の不満は高まり、ギリシャ警察の発表によると、緊縮策への抗議行動は約2万2000件に上っています。
こうした中、反緊縮を掲げるSYRIZAが支持を伸ばし、次回総選挙での政権交代が有力視されています。
貧困層への支援
同党は、緊縮策に伴う「人道的危機」の克服や経済再建に向け、▽貧困層への住宅・電気・食料支援▽最低賃金の引き上げ▽30万人分の雇用創出▽失業手当の給付拡大・増額―などを公約。必要な予算額を113億ユーロ(約1兆6000億円)と推計し、金融市場やトロイカからの新たな借り入れがなくても実現可能だと主張しています。また同国が抱える債務については、EUなどから受けた支援の条件を再交渉する意向を示しています。
SYRIZAへの政権交代と緊縮策の見直しによる「危機の再燃」を懸念する一部投資家をよそに、ECBのヌイ銀行監督委員長は30日、仏ラジオに対し「(ギリシャに関して)個人的には楽観視している」と指摘。IMFも「緊急の融資を必要としていない」と発表しました。
こうした発言の背景には、債務危機を前後した状況の変化があります。とりわけ、債務危機国への融資や国債の買い支えを行う「欧州安定メカニズム」(EMS、12年発足)は、信用不安の連鎖抑制を企図しています。