2014年12月29日(月)
主張
カジノ合法化
法案の再提出は民意無視だ
刑法が禁じる賭博場・カジノ合法化の動きが矛盾に直面しています。「カジノ解禁推進法案」は、衆院の解散にともない廃案となりました。国民の強い反対の世論と運動で、審議に入ることすらできず廃案に至ったことの意味は重いものです。民意をかえりみず、同法案を国会に再提出することは許されません。
推進派の“動機”
カジノ法案は昨年12月、自民、維新、生活の3党が衆院に提出した議員立法です。推進する超党派のカジノ議連(「国際観光産業振興議員連盟」、会長・細田博之自民党幹事長代行)には自民、民主、維新、公明など各党から200人余の国会議員が参加し、臨時国会での「一気呵成(かせい)の成立を」(細田議連会長)と呼号しました。
しかし、報道各社が10月に行った世論調査では、カジノ解禁「反対」が軒並み7〜8割という結果が出て、中央・地方のメディアは社説などで、こぞって「反対」、「慎重」の主張を掲げました。
総選挙で自民党は、公約に「IR(カジノを中核とする統合型リゾート)の推進」の一文を盛り込みました。しかし、選挙戦のなかでカジノ解禁「賛成」の態度をとった議員は37%にすぎず、与党議員のなかにも反対を掲げた議員は少なくありません。なにしろ、新たに衆院議長に就任した町村信孝氏が地元紙の候補者アンケートで、カジノは「ギャンブル依存症の増加や多重債務問題などマイナス面があり、導入すべきではない」と回答していたほどです。
安倍晋三首相は、カジノを「成長戦略の目玉」と位置づけ、政権をあげて推進する態度をとってきました。しかし、選挙中はカジノについて、だんまりを決め込みました。「支持離れを心配し、前面に打ち出していない」(北海道新聞12月4日付)と批判された通り、争点化を徹底して避けたのです。
「カジノ解禁反対」の国民の意思はこれほどに明白なのに、カジノ議連はカジノ法案を再提出し、来年の通常国会での成立に「万全を期す」という声明を出しました。カジノ推進派は、民意に従うのではなく、別の動機で動いているのです。それを裏書きする米財界団体の「意見書」が、最近明るみに出ました。
米国企業などでつくる「在日米国商工会議所」が10月に公表したカジノ合法化法案の「早急な成立」を要求する「意見書」です。日本進出をねらうラスベガスなどのカジノ企業が、日本のカジノで最大限の利益を上げるため、税制上の優遇、賭博場内でのクレジット利用など、とんでもない要求を突きつけています。
これと結び、カジノ事業のおこぼれをねらう日本の財界・地方経済界、中央・地方の政治家が、国民の犠牲などかまわずに、カジノ合法化を押し付けようとしているというのが事の本質です。
きっぱり断念を
沖縄県では翁長雄志(おながたけし)知事が、前知事の進めたカジノ導入検討を中止することを決めました。県民の良識にこたえる英断です。
いま全国各地で、カジノ合法化にも、誘致にも反対する市民の運動が広がっています。「カジノ賭博場は日本のどこにもつくらせない」という声で、カジノ推進派を包囲し、安倍政権のたくらみを断念させなければなりません。