2014年12月23日(火)
主張
法人税先行減税
消費税増税当て込む無節操さ
安倍晋三政権は来週30日にも決める与党の税制「改正」大綱に、法人税の税率を2015年度から2%以上引き下げる方針を盛り込もうとしています。法人税減税で恩恵を受けるのは、もうけが出ている優良企業だけで、減税は財界・大企業の要望に応えたものです。法人税率を1%引き下げれば約5000億円の財源が必要になりますが、安倍政権は一部を政策減税の見直しなどであて、残りは“減税先行”で財源の見通しのないまま強行しようとしています。穴埋めに狙われるのは消費税増税で、国民へのツケ回しです。
「アベノミクス」の目玉
安倍政権がねらう法人税の減税は、国税の法人税と地方税の法人事業税などを合わせ、全国平均で34・62%(東京都は35・64%)の実効税率を2%以上引き下げることです。数年内には20%台にすることをねらっています。安倍首相が今年1月スイスで開かれたダボス会議で明言するなど、「世界でもっとも企業が活躍できる国」をかかげる安倍政権の経済政策「アベノミクス」の目玉です。安倍政権は6月に決めた「新成長戦略」(改訂「日本再興戦略」)にも、法人税減税を盛り込んでいます。
法人税の税率は安倍政権以前から下がり続けており、安倍政権は今年から、東日本大震災の復興財源にあてるため減税分の一部をまわすことになっていた「復興特別法人税」も廃止してしまいました。国民には復興財源としての所得税や住民税の上積みを続け、消費税の増税まで押し付けながら、法人税だけは減税するというのはまったく道理がありません。
法人税は原則として利益を出している企業にしか課税されないので、法人税減税はもうかっている企業をさらにうるおすことにしかなりません。安倍政権は大企業の負担を軽くし、もうけを増やせば、雇用や賃金も上がり、国内への投資も増えて景気がよくなるようにいいますが、大企業のもうけは内部留保に回るだけで、国民に回ってこないのは証明済みです。企業が設備に投資するのは売れる見通しがあることが前提で、国内の購買力を奪っておきながら税金を安くしても投資は増えません。
大企業のもうけを増やすだけなのに法人税の引き下げを強行し、ただでさえ厳しい財政に大穴を明けるのは大問題です。法人税を2%以上引き下げれば税収減は1兆円を超します。安倍政権は政策減税などの見直しに加え、現在は規模の大きな企業にしか適用されていない賃金総額などで税額を決める「外形標準課税」を中小企業にまで拡大するとしていました。大企業の減税のために中小企業に増税を押し付けるのは筋が通らないと批判され、来年度は見送る方向ですが、あきらめたわけではありません。結局財源のめどが立たない減税は、無節操のきわみです。
消費税増税分を先取り
安倍政権は来年10月から予定していた消費税の再増税を延期したものの、1年半後の2017年4月からは増税を強行する構えです。法人税の“先行減税”は、消費税増税を先取りするものでしかありません。消費税増税分を法人税減税に回せば、社会保障の充実も財政再建もいよいよ実現しません。
来年度からの法人税の“先行減税”をやめさせ、消費税増税もきっぱり中止させることが重要です。