2014年10月19日(日)
「慰安婦」問題 本質覆い隠す外務省
ホームページの関連文書削除
政府の対応 世界から孤立招く
外務省ホームページからの関連文書の削除、クマラスワミ報告の訂正要請―。女性を性奴隷状態においた日本軍「慰安婦」問題の本質を覆い隠そうとする日本政府の異常な対応が目立ちます。
外務省は14日までに、「政府が作成したものとの誤解を与えかねない」との理由から、同省のホームページから日本軍「慰安婦」に「償い金」を支給した「アジア女性基金」(2007年に解散)への拠出金呼びかけ文を削除しました。
きっかけになったのは、6日の衆院予算委での次世代の党・山田宏議員の質問。同氏は、呼びかけ文の中に「10代の少女までも含む多くの女性を強制的に慰安婦として軍に従わせたことは、女性の根源的な尊厳を踏みにじる残酷な行為でした」との文言があることを問題視し、外務省ホームページからの削除を求めたのでした。
さらに外務省は14日、日本軍「慰安婦」を「性奴隷」と位置づけた1996年の国連人権委員会による「クマラスワミ報告」について、強制連行について語った「吉田証言」関連部分の撤回を、「朝日新聞の報道撤回」を理由にクマラスワミ氏に要請しました。
こうした一連の動きは、「日本が国ぐるみで性奴隷にしたと、いわれなき中傷が世界で行われている」(安倍晋三首相、3日の衆院予算委)との認識の下で、矢継ぎ早に行われています。
国際社会の見方
国際社会が日本軍「慰安婦」で問題にしているのは、「強制連行」があったかないかではなく、女性の人権をじゅうりんした「慰安所」での強制使役=性奴隷制度です。
「朝日」バッシングを繰り返す読売新聞ですが、同紙ワシントン支局員・今井隆氏ですら『中央公論』11月号で、「従軍慰安婦」問題の米国民の受け止めとして「日本軍が組織的に『慰安婦狩り』をしたかどうかは問題ではなく、『人権問題』である以上は日本が責任を負うべき、ということだ」と指摘しています。
さらに、東郷和彦元オランダ大使は『週刊金曜日』10月10日号で、「国際社会では、『強制連行』でなくても、騙(だま)された結果連れて行かれ、意思に反して『慰安婦』として働かざるをえなくなったら、十分にひどい話だと思われています」と語っています。そして、「日本は世界で『歴史問題』ではどうにもならない国、相手にもしたくない国へと自らを追い込みかねません」と警告しています。
国際公約と矛盾
安倍首相は9月25日、国連総会の一般討論演説で、「日本は、紛争下での性的暴力をなくすため、国際社会の先頭に立ってリードする」と述べ、「心に大きな傷を受けた女性たちの自立を、世界中で応援し、支えていきたい」とも語りました。この演説に沿うならば、日本政府は女性の人権問題を世界に最も発信しなければならないはずです。
ところが、日本軍「慰安婦」の本質を覆い隠そうとする政府の一連の対応は、こうした国際公約とも矛盾しています。これでは、ますます世界から孤立を招くばかりです。(山田英明)