2014年10月7日(火)
「情報収集 項目与えた」
自衛隊国民監視差し止め訴訟 元情報保全室長証言 組織的関与鮮明に
自衛隊による国民監視の差し止めを市民らが求める訴訟の控訴審の第10回口頭弁論が6日、仙台高等裁判所で開かれ、陸上幕僚監部運用支援・情報部情報課の末安雅之情報保全室長(当時)が、初めて証言台に立ち、情報保全隊に、情報収集する項目を与えていたと証言。自衛隊の司令部である幕僚監部が国民監視活動に深く関わり、組織をあげて行っていることが鮮明になりました。
末安氏は、原告弁護団の甫守(ほもり)一樹弁護士の質問に答え、情報保全隊に、「包括的な情報収集項目を与えていた」とのべました。その内容として、自衛隊のイラク派遣に対する「国内の反対動向」として、集会・デモ・署名活動・ビラ配布・街頭宣伝などが含まれていたことを認めました。
情報保全隊への個別具体的な指示については出していないとしました。しかし、同訴訟で先に証言した鈴木健元陸自情報保全隊長は「運用支援・情報部(鈴木氏が現役当時は調査部)から指示を得ていた」と語っています。
また、情報保全隊の収集する情報に、個人名などの情報が含まれ、それを陸上幕僚監部内に配布していたことも認めました。公の情報だから問題はないと話し、「公でない人の名前を保全隊が調べたら、それは問題だ」と述べました。しかし、公かどうかの確認はせず、情報保全隊まかせだったなどと、責任逃れに終始しました。
口頭弁論後の報告集会で原告団・弁護団は、「12月10日には秘密保護法が施行されるもとで、意義のあるこのたたかいを広げよう」と呼びかけました。
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「今も組織ぐるみで続く」
国民監視 元幹部指摘
「(イラク派遣反対運動に関する情報保全隊からの情報は)当時、本当にいっぱいあった」―。仙台高裁で6日に開かれた自衛隊による国民監視差し止め訴訟で、証言に立った陸上幕僚監部運用支援・情報部情報課の末安雅之元情報保全室長は、保全室が国民監視に関与していることを認めたうえで、思わずこうもらしました。
自衛隊の海外派兵に反対するという憲法の精神にもとづいた当然の市民の行動を「反自衛隊活動」だとして敵視。情報保全隊だけでなく自衛隊組織をあげて国民監視に執念を燃やしていることがあらためて浮き彫りになりました。安倍政権が、集団的自衛権行使容認の閣議決定をしたもとで、この動きがさらに強まる危険性が高まっています。
本紙の調べでは、情報保全隊と密接に連携している「情報保全部署」が、陸上だけでなく海上、航空自衛隊もふくめて自衛隊の司令部である各幕僚監部に存在します。(1月15日付)
12月10日に施行が予定される秘密保護法では、防衛省・自衛隊関連の事項が「特定秘密」に最も多く指定されています。陸幕の情報保全室など「情報保全部署」が情報保全隊と一体となって、自衛隊員や民間人への身辺調査である「適性評価」を進めるのです。
自衛隊の情報活動に詳しい元幹部は、こう指摘します。「情報保全隊の主たる任務は市民監視だ。これに指示を出しているのが情報保全室。この組織ぐるみの監視活動は今でも続いているし、さらに強まるだろう。それだけに市民の側からの監視を強めてほしい」(森近茂樹)