2014年7月26日(土)
2014 とくほう・特報
「ブラックバイトから学生生活を守ろう」 共産党提言に反響
「この働き方おかしいよね」ビラ読み 声上げ 変わった
“いま読んだけど もろ当てはまる”
日本共産党が6月に発表した政策提言「ブラックバイトから学生生活を守ろう」が反響を呼んでいます。学生や大学教員が、「ここに書かれているのは自分のバイト先のこと」「自分の大学で起きていること」と受けとめ、この提言を広げているのが特徴です。(党政策委員会 坂井希)
|
提言をバイト先で話題にしたのをきっかけに、待遇が改善された学生がいます。神奈川県内の大学1年生、中村彩夏さん(19)=仮名=です。
中村さんは九州の出身。現在、大学のある地域で1人暮らしをしています。実家からの仕送りはありません。奨学金を月10万円借りて学費と家賃に充て、生活費は居酒屋でのアルバイトでまかなっています。
授業出られず
今のバイト先は、アパートをあっせんしてくれた不動産屋の社長が、「時給が安いと生活に困るだろうから」と紹介してくれました。今年5月に新しく開店した店舗で、オーナーも店を持つのが初めてなら、かき集められた従業員もほとんど全員が学生バイトです。みな慣れない仕事をこなすのに必死で、目の回るような忙しさでした。
中村さんは当初は週3日働くつもりでしたが、接客もドリンク作りもできるスタッフとして当てにされ、週5、6日店に出るようになりました。早い日は午後3時に出勤して仕込みをし、開店の午後5時から閉店の深夜1時すぎまで、腰をおろす間もなく働きました。
6月に入るころには、疲れ切って朝起きられず、週4日ある大学の1時限目の授業にほとんど出られなくなりました。学科の友人たちから「どうして授業に来ないの?」「顔色悪いよ」と心配されました。
そんなときに読んだ日本共産党の提言。休憩がない、テスト期間中も休みづらい、高学費のためバイトがきつくても辞められない―すべてが自分の境遇と重なりました。
翌日、「最近みんな顔が死んでるよね。このままではやばくない? 昨日、ブラックバイトについて書かれたものを読んだんだけど」と、バイト先で提言を話題にしました。全員が中村さんの話に強い共感を示しました。
|
休憩とれた!
その場にいたバイトリーダーが、オーナーに話をしてくれたようです。さっそく次の日、(1)休憩時間を導入する(2)仕事を終える時間は希望制にする(3)深夜0時以降は賃金割増率をさらにアップする―との改善策が示されました。交代で店の奥で座って夕食をとれるようになり、翌日1時限目の授業があるときには日付が変わる前にあがれるようになりました。
「オーナーはいい人だし、バイト仲間同士も仲がいい。だから『この働き方おかしいよね』って言ってみようと思えた」と語る中村さん。「来年は大学の授業がもっと忙しくなるけど、シフトを調整できる見通しが持てた」と、ホッとした笑顔を見せました。
「大学でも取り組み強めたい」
日本共産党の提言に、大学関係者からも「大事な提起」「本学でもとりくみを強めたい」などの声が寄せられています。東北地方の4年制大学の教員、太田光一さん=仮名=に、手記を寄せてもらいました。
東北地方の大学教員
太田光一さんの手記
私が住んでいるのは東北の人口十数万人の小都市で、小規模の大学と短大があります。街中のコンビニ、スーパー、ファミレス、居酒屋、ガソリンスタンド、進学塾…、どこにいっても学生が働いています。
私がずいぶん前から気になっていたのは、夜の居酒屋などでバイトしている学生の勉学状況です。学業との両立ができず退学してしまう姿を目撃してきました。昔から苦学生はいましたが、最近ますます学生アルバイトの弊害を感じています。
1番の問題点は、深夜バイトが増えていることです。そもそも24時間あるいは深夜営業の店が増えています。バイト代がおそろしく安いので、比較的単価の高い深夜勤務を選びがちです。そういう所でバイトをしていれば、1時間目の授業に出席できないのは当然です。
2番目の問題は「バイトが休めない」ということです。昨年度1年生20人のクラス担任をし、この春2年生に進学した学生と久しぶりに面談したのですが、1年生の時にバイトをしていなかった学生も多くがバイトを始めており、「楽しい」という学生も少数いますが、ほとんどの学生が「休めない」というのです。
どの店もぎりぎりの人数でコストを削減し、バイト学生にかなり重い仕事を割り当てています。責任感が強くまじめな学生ほど、「自分が休むと同僚や店に迷惑がかかる」と考えています。もちろん労働3法の基本などは、どこでも教えてもらっていません。
バイトの実態を調べないといけないと思っていた矢先、日本共産党の提言を目にし、ふだんは腰の重い私ですが販売店で数部購入し、学生課に「はり出すよ」とかけあって提言が掲載された「しんぶん赤旗」紙面を掲示板にはりました。そばに置いたチラシは20部ほどがすぐになくなり、ツイッターで記事を読んだことをつぶやいた学生もいたようです。
ブラック企業は大学側としても紹介しないという姿勢が全国的にも徐々に広まってきています。バイトについても学生でもやっていけるものを選別するなど、学生生活を守るとりくみに力を入れることが必要ではないでしょうか。
|
大学新聞も注目
大阪市立大学新聞は7月7日付でコラム「ブラックバイトに気をつけろ!」を掲載。ブラックバイトが増加している要因を非正規雇用の拡大や国民の所得減少、学生の意識の変化などから考察し、「ブラックバイトをなくすための取り組みは、すでに各所で行われている」として、日本共産党の提言を紹介しています。
ブラックバイト 若者を使いつぶす「ブラック企業」のように学生を違法・無法な働かせ方で酷使し、勉学もままならない状態にさせるアルバイト。雇用破壊が進み、基幹的な仕事を非正規に肩代わりさせる動きが広がるなかで深刻化しました。
|