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2014年7月13日(日)

2014焦点・論点

天気が変だ!?

異常気象と地球温暖化

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 局地的な豪雨、台風の大型化、竜巻の発生、炎暑、記録的な大雪…。近年、日本列島で例年と違った天気現象が起きていることを人々が体験しています。異常な気象現象がなぜ起きるのか、地球温暖化との関係は…、専門家2氏に聞きました。

(聞き手・山沢猛 写真・田中秀和)


温暖化の影響は確実に

筑波大学生命環境系主幹研究員(気候学) 鬼頭昭雄さん

写真

(写真) きとう・あきお 1953年大阪市生まれ。気象庁気象研究所気候研究部長など歴任。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第1作業部会報告書の執筆者を4回務める。著書に『気候は変えられるか?』(ウェッジ選書)。

水蒸気が増える

 ―気象への温暖化の影響はどのように表れるのですか。

 日本では100年前と比べると気温が1度上がっています。都市化の影響の小さいところを選んで測定した結果です。気温が高ければ大気はより多くの水蒸気を含みます。私たちの頭の上の水蒸気は気温が上がると増えていく。1度上がると7%水蒸気が増えます。このように大気中の水蒸気が増えることが、温暖化による大雨の増加の主原因なのです。

 都市部では温暖化に加えて、人間の活動が原因となるヒートアイランド(熱の島)現象などで気温上昇がおこります。東京ではこの100年で3度上昇しています。熱中症などの健康被害が懸念されています。

 高温、大雨、豪雪、乾燥などの異常気象は世界各地で普通に起きています。数十年に1回程度起きることは「自然の揺らぎ」であり正常なので、それを直接温暖化に結びつけるのは、妥当ではありません。温暖化はその異常気象が起きる頻度、程度の問題で変調をきたすことに寄与しています。100年に1回起きていたことが10年に1回起こるなどです。

 温暖化の影響は確かですが、20年、30年くらいでは「自然の揺らぎ」との分離がむずかしい。私たちは21世紀末の気候変動がどうなるかをスーパーコンピューターも使い研究しています。

強い台風が発生

 ―台風やハリケーンの研究結果も公表しています。

 台風やハリケーンの実態は同じ熱帯低気圧です。今世紀末には熱帯低気圧の数は減るでしょう。熱帯の大気は冷たい上空と暖かい海面付近で対流が起こります。温暖化すると上空のほうがより暖かいため、上昇流が弱くなり、一つ一つの熱帯低気圧が起こりにくくなり、数が減ります。

 ただしこれは弱いものを含めた数で、温暖化すると発達するためのエネルギー源は増えるので、いったん発生すると、2005年にアメリカ南東部を襲ったカトリーナのような強いハリケーンや台風になる可能性は増えるとみています。

 ―気候の変化は長期的にじわじわと身近な気象にも及んでくるといっていますね。

 そうです。工業化以来の二酸化炭素の累積総排出量の増大と、同じ期間の地球の大気の気温上昇はだいたい比例しています。今後もそうなるでしょう。二酸化炭素の排出を今止めても、これまでに累積した量は減りません。気温を今より下げようとすると二酸化炭素を大気から抜かなければなりませんが、それはなかなか難しい。

 それから大気の気温と海の水温は応答する時間が違います。温室効果ガス濃度が増えると大気の温度はすぐ上がりますが、海は海面ではすぐ上がるが深いところは上がりません。海は上が暖かく下が冷たい状態で安定しているからです。いずれ下まで暖かくなるが長い時間がかかる。この海も、グリーンランドなどの氷床も、いったん温暖化の影響が及べばもとにもどすことは困難です。

 人間が原因の温室効果ガス排出を減らし、産業革命以降の世界の気温上昇を2度以内に抑える手だてを早くとらないとだめです。

グラフ

(気象庁資料から)


「偏西風の蛇行」が支配

法政大学教授(気候学) 佐藤典人さん

写真

(写真) さとう・のりひと 1946年秋田県生まれ。現在、法政大学文学部地理学科教授。著書に『異常気象を知りつくす本』(インデックス・コミュニケーションズ)など。

狭くて強い流れ

 ―例年と異なる極端な天気になる背景に「偏西風の蛇行」の変化をあげていますね。

 30年に1回くらいの確率で起きる現象が「異常気象」と呼ばれています。去る2月に山梨をはじめ関東甲信や東北地方を襲った記録的大雪は異常気象と言えるでしょう。「異常」とまでは行かないまでも、6月初めに北海道の富良野地方で36度を超える同地での最高温度を記録しました。

 もともと日本のような北半球の中緯度に位置する地域では天気の変化が大変めまぐるしいところです。北極側の冷たい大気と赤道側の暖かい大気とがまじり合って熱交換をするゆえです。その際、例年の振れ幅を逸脱するような現象も起きます。

 地球上で日本の位置する中緯度では、地球の自転に伴って、偏西風と呼ばれる西風が卓越して吹いています。その中でも地上10キロ付近に狭くて強い流れがあり、それがジェット気流(ジェットストリーム)です。この蛇行が地上の天気を支配しているのです。(図参照)

 蛇行が北極側から日本の方に舌のようにでていますね。この北極側から赤道の側に出ているのが「気圧の谷」で、寒気の南下です。逆に赤道側から北極の側に出っ張っているのが「気圧の尾根」で、これは暖気の北上です。気圧の谷から尾根にかけての地上に低気圧の中心が、尾根から谷にかけての地上に高気圧が位置します。

 この気圧の谷と尾根がワンセットになって偏西風の波動を形成しています。冬は大気の流れが速くて波の数が少なくなり、夏は流れが遅く波の数が多くなります。

南北の温度差が

 ―このような偏西風の蛇行の変化はなぜ起こるのでしょうか。

 問題はこの偏西風の流れ方に、北極と赤道の温度差が影響することです。南北の温度差が大きければ、偏西風の流れが速くなり、蛇行しにくくなります。逆に温度差が小さければ偏西風の流れが遅くなり、蛇行しやすくなるということです。

 いわゆる地球温暖化の影響はシベリアなど高緯度地方の冬に現れやすく、その結果、冬の北極域の気温があまり下がらなくなりつつあります。北極海の氷が解けて水域が広がると太陽の熱を反射せずに逆に熱を吸収します。そうすると北極海を覆う大気が熱を受容するのであまり冷えなくなります。

 偏西風の蛇行の数が増えると、通常なら気圧の「谷」になるところが谷でなくなれば、その下では例年より暖かくなります。通常「尾根」のところへ「谷」がくると例年より寒くなるとか、通常の状態ではなくなります。異常なことが起きる背景にはそうしたことがあります。

 ジェット気流の蛇行の振れ幅が大きくなると膨れた部分がちぎれて切り離されます。これが「ブロッキング現象」と呼ばれ、切り離された高気圧や低気圧が生まれます。日本の梅雨は、太平洋高気圧とオホーツク海高気圧のせめぎあいによって生ずる現象ですが、このオホーツク海高気圧がブロッキング高気圧なのです。だからしばらく居座ることになります。

 偏西風の蛇行は、高気圧と低気圧の位置関係、寒気の南下と暖気の北上などを支配しています。そこを念頭において異常気象などを考えていただければ的確ではないかと思います。

図

緯度40〜60度帯を流れるのが寒帯ジェット気流、30度付近を流れるのが亜熱帯ジェット(COKBEEWeather提供)


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