2014年7月10日(木)
ネオニコチノイド 新型殺虫剤で野鳥減
オランダチーム調べ
科学誌『ネイチャー』掲載
近年、世界中で使用量が急増している新型の殺虫剤、ネオニコチノイドの濃度が高い場所で野鳥が減少していることが明らかになった―。オランダ・ラットバウト大学などの研究グループがネオニコチノイド濃度と野鳥の生息状況を調査した結果わかったと、10日発行の科学誌『ネイチャー』に発表しました。
研究グループは2003〜09年にかけて行われたオランダ国内の農地の水に含まれるネオニコチノイド殺虫剤の一種、イミダクロプリドの濃度の調査結果と、03〜10年にかけて行われた農地に生息する野鳥の生息調査結果にどのような相関があるか調べました。
対象とした鳥は昆虫を餌とするスズメ目の15種で、イミダクロプリドの濃度が水1リットル中に約20ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)より高い場所ではほとんどが数を減らしていることが明らかになったといいます。
研究グループは、減少の主な原因はイミダクロプリドによって餌にしている昆虫がいなくなったためとみていますが、昆虫に含まれていたイミダクロプリドが鳥の体内に蓄積し、影響を及ぼしている可能性もあるとしています。
ネオニコチノイドをめぐっては、目的とした害虫以外に、野菜や果実の花粉を媒介する昆虫が数を大きく減らしたり、鳥類に悪影響を及ぼしているなどの指摘が以前からありました。
解説
繰り返す生態系破壊
ネオニコチノイドは、天然の殺虫剤として使われてきたニコチノイド(タバコの葉に含まれるニコチンなど)に似た構造を持つ人工の化学物質で、神経系に作用します。哺乳類や鳥類などには影響が少ないとして、カーバメートや有機リンといった殺虫剤の代わりに20年ほど前から日本を含む世界各国で盛んに使われています。
オランダでは、1994年からイミダクロプリドが使われるようになり、10年あまりで使用量が10倍近くなったといいます。
ネオニコチノイドは近年世界各国で報告されているミツバチの大量死との関連が指摘されています。EU(欧州連合)は昨年12月からイミダクロプリドを含む3種類のネオニコチノイドの使用を全域で2年間原則使用禁止にしました。そのうちの一つのクロチアニジンを生産している住友化学はこれに対し、「(EUの決定を)行き過ぎたもの」との見解を発表しています。
殺虫剤によって、目的外の昆虫が大量に死に、それを餌にする鳥が姿を消す例は過去にもありました。アメリカの生物学者で作家のレイチェル・カーソンは1962年に発表した「沈黙の春」でDDTのような殺虫剤の過剰使用による生態系の破壊を告発しました。
オランダ研究グループの論文に対する論評を『ネイチャー』に寄せたイギリス・サセックス大学のデーブ・ゴウソン教授は「(カーソンが現在の状況を見たら)われわれが過去の失敗から何も学んでいないと思うだろう」と批判しています。 (間宮利夫)