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2014年7月9日(水)

2014 とくほう・特報

学校給食法60年 原点に返るとき

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 1954年に「学校給食法」が制定されて60年がたちました。日本中の子どもたちが6〜9年間、毎日食べ続ける学校給食。心身の成長や発達に与える影響は小さくありません。小学校給食を中心に、現状と課題を追いました。 (平井真帆)


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(写真)▲高崎市の塚沢小の給食。メニューは、枝豆ご飯、みそ汁、鶏肉のコーンフレーク焼き、アーモンドあえ、牛乳、フルーツ。この月は「かむかむ月間」で、かみごたえのある食材が取り入れられています

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(写真)▲加工品が目立つアメリカの給食。メニューは、チョコレート味の牛乳、インスタントのマッシュポテト、冷凍食品のフライフィッシュ、缶詰のパイナップル、キュウリの輪切り=芽ばえ社提供

給食は人間つくる基本

 アメリカで栄養士として働いていた鈴木昭子さんは、米国育ちの長女(当時小3)が、初めて日本の給食調理室を目にしたときの言葉が忘れられません。

 「調理場をのぞいたら、本当にご飯を作っていたんだよ!」。驚いた鈴木さんが「アメリカの学校ではどうやって作っているの?」と聞き返すと「ホットドッグとかを温めていたのは見たことがある。あとは冷凍ピザをオーブンに入れるくらいかな」との答え。

 鈴木さんは日本の給食を見て「原材料から手作りの献立を提供するだけでなく、子どもたちの大好物メニューが含まれていて、バラエティー豊か」と、感心します。

98%を超える小学校で

 学校給食の歴史は1889年(明治22年)、山形県の小学校で貧しい子どもたちに、お坊さんが食事を出したのが始まりとされています。

 戦後、全国の教師や保護者が学校給食の法制化をめざし署名運動を開始。1954年「学校給食法」が制定されました。(08年改定)

 05年には「食育基本法」が制定。「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける」と明記されました。

 現在、98%を超える国公私立小学校で学校給食が実施されています。給食に「ご飯」を週3回以上出している学校は約95%。週5回ご飯を出す「完全米飯給食」を実施している学校は7%とわずかですが、年々増え、2000校以上あります。

 保護者の給食食材への関心は高く、パルシステム生活協同組合連合会が小学生の子どもを持つ30〜49歳の母親1000人を対象に行った「学校給食に関する調査2013」では、給食に「地元の食材を優先的に使うべきだと思う」と答えた人が約92%。「外国産の方が安くとも、国産品を使うべきだと思う」と答えた人が79%いました。

政府通達で混乱・後退

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 「“給食は教育の一環である”ということが明確に位置づけられている学校給食法の精神は、大変すばらしいものです」

 こう語るのは学校給食研究家の雨宮正子さんです。半世紀以上にわたり「子どもたちに安全・安心な給食を」と活動してきました。

 「ところが現実がともなっていない。国は実際にやっていることが全く違うのです」

 文部科学省は85年「学校給食業務の運営の合理化」を求める通達を出しました。

 内容は、調理員のパートタイム化、センター方式の導入、調理業務の民間委託を進めることにより「人件費等の経常経費の適正化を図る」ことを求めるもの。安上がりの学校給食へと、大きくかじを切る中身でした。

 各地で民営化反対の運動が繰り広げられましたが、小泉政権による「構造改革」路線の下、調理の民間委託が推し進められました(グラフ参照)。さらに政府は、学校給食で使う米への助成金を2000年に廃止しました。こうした政府の方針が、給食の現場に混乱と後退をもたらしています。

無料で実施の自治体も

 「給食が教育の一環であるならば、憲法26条に保障されている、教育を受ける権利と『義務教育は、これを無償とする』との精神に照らして本来、無料であるべきものです」と指摘する雨宮さん。

 すでに自治体の努力で学校給食を無料にしている市町村もあります。

 山口県和木町(わきちょう)では、戦後の開始時から給食費は無料。現在でも幼稚園、小・中学校で無料化を継続しています。兵庫県相生(あいおい)市は2011年から市立の幼稚園、小・中学校の無料化に踏み切っています。

 群馬県南牧(なんもく)村の公立小・中学、北海道三笠市の小学校なども無料。茨城県大子町(だいごまち)や千葉県神崎町(こうざきまち)など半額を補助している自治体もあります。

 雨宮さんは訴えます。「学校給食は人間づくりの基本であり、生命の尊さを学ぶ場である、というのが学校給食法の理念です。世界遺産に登録された日本の食文化を、子どもたちに継承させてゆく場でもあります。今こそ、その原点に立ち返る時ではないでしょうか」

「自校方式」で地産地消 群馬・高崎

サバのみそ煮大好き 米は地元産100%

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(写真)「これくらいでいい?」。一人ひとりにたずねながら、ご飯やおかずをよそう子どもたち(塚沢小)

 群馬県高崎市は人口約37万人の県下最大の都市。ここでは「自校方式」による地産地消の給食を守り、充実させてきた長い歴史があります。高崎市立塚沢小学校を訪ねました。

 「本校では和食を中心に伝統食も大切にしています。ひじきやサバのみそ煮は子どもたちの大好物。家庭ではなかなか作らない“芋がら(サトイモの茎)の煮つけ”などもよく食べますよ」

 にこやかにこう話すのは小柴孝子校長です。「健康な心と体をつくることが、私たちの学校教育の大切な目標の一つ。その底辺を支えるのが、食なのです」

 塚沢小では理科や社会の授業に連動させて「食育」の授業を取り入れています。ソラマメのサヤで小船を作ったり、トウモロコシの皮をむいたり…。

 その中心を担うのが栄養教諭の久保幸子さんです。授業で初めておにぎりを握った、という子どもたちに久保さんは「おにぎりが握れれば、自分でおやつが作れるんだよ。コンビニでお菓子を買わなくてもいいんだよ」と語りかけます。

 久保さんは、こうした授業を年間70時間以上もこなし、実際の調理にも加わります。どの子がどんなアレルギーを持っているかも把握しています。

 「給食作りは、子どもたちが一生涯、健康で楽しく過ごせる基礎をつくる大事な仕事。子どもたちの命を預かり、人生の土台を作っているのです」と、日々誇りとやりがいを感じています。

 市では栄養教諭と栄養士が70人以上、配置されています(県費30人、市費44人)。

 給食で使う米は地元産を100%使用。他の食材についても群馬県産の野菜を48%以上使用しています。また、高崎産の食材を使用した「高崎しょうゆ」「高崎ソース」を開発し、無塩せきのハムやベーコンを給食で使っています。

 市では学校給食がスタートした1930年代から自校方式を行ってきましたが、06〜09年にかけて合併した周辺の6町村は「センター方式」を実施していました。

 しかし、学校や給食センターの建て替え時に合わせて、これまでに14校が順次、自校方式に移行しました。

市民運動の歴史今後も守りたい

 日本共産党の高崎市議・竹本まことさんの話 高崎の学校給食には、PTAや新日本婦人の会などの市民運動、また議会での論戦など、多くの関係者が粘り強く努力してきた歴史があります。今後も自校方式への切り替えを進め、高崎の学校給食を守っていきたいと思っています。


 「自校方式」と「センター方式」 「自校方式」とは、各学校がそれぞれ調理室と専属の職員を置き、その学校の生徒に給食を提供するシステム。「センター方式」とは、学校外に集中調理施設を設け、複数の学校の給食を一括して調理し、各学校に配送するシステムです。


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