2014年6月26日(木)
主張
法人税減税の強行
消費税増税と矛盾感じないか
安倍晋三政権が経済財政運営の「骨太の方針」と成長戦略の改訂版を閣議決定し、法人税の税率を来年度から大幅に引き下げることを正式に決めました。これを受け政府の税制調査会も、中小法人に負担を押し付けるなど法人税「改革」の基本方針を了承しました。来年10月からは消費税の税率10%への再増税が予定されています。閣議後の首相の記者会見でも、法人税減税と消費税増税は「セット」か、との質問が出ました。首相は否定しましたが、消費税を増税する一方、法人税減税を強行することの矛盾は明白です。
財界の“お手盛り”減税
法人税の税率を、国税と地方税合わせた実効税率で現在の35%前後(自治体で違う)から20%台に引き下げる減税は、財界・大企業が強く要求していたものです。安倍政権の閣議決定に、経団連の榊原定征(さだゆき)会長は「画期的な方針」「経済界の考え方と軌を一にする」と手放しで賛美し、経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事も「決定を評価する」としています。もともと両氏とも、成長戦略を決めた産業競争力会議の民間議員であり、法人税減税はまさに財界の“お手盛り”の政策です。
法人税は、「欧米より高い」などの口実で税率が繰り返し引き下げられてきました。実際には法人税には租税特別措置や政策減税などさまざまな減税措置があるため、実質税率は見かけより低く、しかも赤字を出した欠損法人は払わなくてもいいため、日本最大企業のトヨタが5年間にわたり1円も法人税を払っていなかったような事態が起きています。1%の税率引き下げで約5000億円の税収減ですが、法人税を払っている企業は約3割で、減税はごく一部の大企業だけをうるおします。
一方、消費税増税はあらゆる商品やサービスが課税対象になるため、赤ちゃんからお年寄りまで全国民に負担がかぶさります。ことし4月から3%税率を引き上げ、さらに来年10月から2%上乗せすれば、3月までにくらべ税率は倍になり、合わせて10兆円を超す負担です。一部の大企業の減税の一方で国民に負担を押し付けるのは不公平極まりない政策です。
消費税増税と法人税減税は「セット」か、と質問された安倍首相は、消費税増税は社会保障などの財源にあてるもの、法人税減税は日本の競争力を高めるためのものなので、「関係ない」といいました。「骨太の方針」でも医療や介護を「聖域なく見直す」としていながら、消費税増税は社会保障のためとはよくいえたものですが、消費税が法人税の減収分の穴埋めに使われてきたのはこれまでの実態です。消費税の導入以来の税収は282兆円で、法人税の減収は255兆円とほぼ匹敵しています。「セットでない」とはごまかしです。
中小企業大増税の危険
政府の税制調査会は、法人税の減税と同時に、法人課税を“広く薄く”負担を求める構造にするとして、赤字法人や中小企業への課税を強化する方針を打ち出しました。一部のもうかっている大企業の減税のため中小企業に増税するのはまさに本末転倒です。
消費税増税とともに、不公平拡大の大企業減税はやめるべきです。国民の所得を増やして経済を成長させるとともに、応能負担を原則に、税財政を改革すべきです。