2014年6月22日(日)
語ろう!集団的自衛権の危険
安倍政権が、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更の閣議決定を強行しようとしています。「海外で戦争をしない」という、戦後日本の出発点を根幹から覆すものです。集団的自衛権の危険を、全国津々浦々で大いに宣伝し、語っていきましょう。
集団的自衛権って?
「海外で戦争する国」への大転換
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集団的自衛権とは、「自衛」と名がついていますが、自分を守る「自衛」とは無縁です。日本が攻撃されていなくても、他国が攻撃されたときにともに武力行使する権利です。つまり、日本が他国の戦争に加わる「攻撃参加権」なのです。
このため政府が示した閣議決定原案にも、「他国に対する武力攻撃が発生」し、時の政権が「わが国の存立が脅かされ」ると判断した場合などには「武力の行使」が認められると書かれています。
共通の敵から自分の国を守るためにともに助け合う権利という考えも、全く違います。
「集団的自衛権の行使」とこれまで主張された主な事例でみると、米国や旧ソ連といった巨大な軍事力を持った大国が、ベトナムやアフガニスタンなど小さな国に攻め入っている侵略戦争がほとんどです。
アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争をアメリカが引き起こしたさいに、自衛隊が「戦闘地域」までいって軍事支援を行う―すなわちアメリカの戦争のために日本の若者の血を流すというのがその正体です。
日本は憲法9条の下で「海外で戦争をしてはならない」と決めました。集団的自衛権を行使できるようにして、この大原則を転換し、「海外で戦争する国」にしていいのかが問われています。
行使ってどういうこと?
米の戦争で日本の若者が犠牲に
政府はアフガニスタン戦争やイラク戦争でアメリカの要請に応えて自衛隊を派兵しました。しかし、憲法9条があったため、(1)武力行使はしてはならない(2)戦闘地域に行ってはならないという二つの歯止めをかけました。それで自衛隊の活動は「非戦闘地域」「後方支援」に限られ、犠牲者を出しませんでした。
集団的自衛権が行使された場合、この二つの歯止めを残すのか、残さないのか。国会で日本共産党の志位和夫委員長は繰り返しこの点を安倍首相に尋ねました。首相は最後まで「残す」とは答えませんでした。
自民党と公明党は与党協議をしていますが、「戦闘地域」には行かないという制約を廃止し、自衛隊の活動を拡大することを明らかにしています。
歯止めも外れ戦闘しているところに自衛隊が行けば、たとえ「後方支援」であっても犠牲者が出ることはアフガニスタン戦争でも明らかです。
ドイツは、平和維持や復興支援を目的に派兵しましたが、55人の犠牲者を出しています。NATO諸国では1032人が犠牲になっています。自衛隊はアメリカの戦争のために、殺し殺される状況に追いやられるのです。
「限定」というけど本当?
実際は「無限定」 拡大解釈が本音
政府や自民党は、集団的自衛権を認めるといっても「限定的」だといっています。
「限定」の一つが、「わが国の存立が脅かされる」とか国民の権利が「根底から覆される」などの「おそれ」がある場合という条件がついているから、という理屈です。
しかし、「おそれ」かどうかを判断するのは時の政権です。何が「国の存立」にかかわるのかも政権まかせ。集団的自衛権を行使する場所について地理的な制限はなく、事態の性質・内容によると説明しています。制限するものは何もありません。しかも、事態が実際起こってからではなく、その「おそれ」があると判断すればいいのですから、実際は「限定」どころか「無限定」です。
行使するといっても「必要最小限度」だから大丈夫という理屈も出ています。
首相や自民党幹部は、停戦する前の機雷掃海を例にして、「受動的・限定的な行為」なら許されるという勝手な議論をしています。「積極的に相手をたたく戦闘行為」以外なら、なんでもできることになります。
「限定的」だといっていますが、一度風穴をあければ、どこまでも拡大解釈ができる、これが政府や自民党の本音です。
国民の命守るは本当?
国民に血を流させるのが本質
安倍首相は集団的自衛権を説明するとき「国民の命を守る」と繰り返しています。5月のテレビ記者会見では、赤ちゃんを抱いた女性がアメリカの艦船に乗っているパネルまで持ち出し、こんな場合「何もできなくていいのか」と国民を脅しました。
そもそも、海外にいる日本人を輸送するのは日本政府の責任でやるべきこと。アメリカの艦船に頼る問題ではありません。
実際は、あべこべ。集団的自衛権を行使するということは、国民に血を流させることです。自民党の石破茂幹事長も「集団的自衛権を行使するようになれば、自衛隊が他国民のために血を流すことになるかもしれない」と認めています。
安倍首相も「今の憲法解釈のもとでは、アメリカが攻撃を受けたときに、日本の自衛隊が血を流すことはない」と嘆いてきました。
元内閣審議官の古賀茂明さんは、日本がアルカイダなどのテロの標的になっていないのは、憲法9条のもと自衛隊がアラブの人を殺したことがないからだと指摘し、「もし日本が、アメリカの同盟国として中東の戦闘に参加すれば、日本もテロリストに狙われる可能性が強くなる」と語っています。血を流すのは自衛隊だけではなくなります。
解釈で変える?
立憲主義否定と広範な人が批判
安倍政権は、これまで政府が示してきた憲法解釈を変更することで、集団的自衛権行使を認められるようにしようとしています。
歴代の自民党政権は、戦後一貫して「憲法9条の下では集団的自衛権行使は許されない」との解釈を示してきました。この政府解釈は、ある日突然、政府が一片の見解を出して決まったものではありません。戦後半世紀にわたる国会の議論を積み重ねて政府見解として定着し、確定してきたものです。
この半世紀にわたる憲法解釈を百八十度覆そうとしているのが安倍政権です。
「海外で戦争する国」への大転換なのに、国民多数の声に耳を傾けない。国会でのまともな議論もしない。与党だけでの密室協議をつうじて、一内閣の閣議決定で行おうというのです。まさに憲法破壊のクーデターです。
こんな常軌を逸した乱暴さを、広範な人たちが「立憲主義の否定だ」と批判しています。「解釈で憲法を壊すな」。国民の世論と運動でこの憲法破壊の暴挙を必ず打ち破りましょう。